8 軍病院 3

浄水場へと続くパイプラインの傍には管理用の通路(階段)が設けられており、それは山の上の貯水池に繋がっていた。雑木林で覆われた薄暗い階段には苔がびっしりと生えている。その中腹辺りまで進んでいた。
先頭を雄輝、その後に他のメンバーが続く。
雄輝は、管理が行き届いていないその階段に生い茂った雑草で通行に邪魔なものをテレキネシスでどけていった。最初はただ退かすだけだったのだが、退かした後に跳ね返ってきて次に歩いていた青葉の顔に直撃したので、まるで手を刀の様にしてテレキネシスで雑草を切り倒しながら進んだ。
三次は雄輝と同じ能力が使えるので、切り刻まれた雑草で通行に邪魔になるものを脇にどけた。
「ふと思ったんだけどさ」と佐藤が言う。
「なに?」青葉がそれに答える。
「結構あがったよな。これぐらいのペースでここまであがってさ、俺ぜんぜん息が上がってない。みんなはどう?」
その場に居たみんながみんな、「ぜんぜん息が上がってない」と答える。
「それがどうしたんだよ?」
と青葉。まだ佐藤の意図が汲み取れないらしい。
「確かに高校生で一番体力があるとは思うけど、運動部だってこれだけの距離を休憩なしであがって、呼吸一つ乱さないってありえる?」
「女になって身体が軽くなったんじゃない?」
「いやいやいや…」
「まぁ、みんな超能力が使えてるって時点でそんな些細なことどうでもよくなったけどね」と青葉が言う。
確かにそんな事はどうでもよくなるぐらいに様々な変化があった。今も先頭を歩いている雄輝が念力で雑草をぶち切っている。最初は手を翳して切っていたが次第にその力が強くなってきたのか、コツを掴んできたのか、手をポケットに入れたままで周囲の草木を切り刻んでいる。これにはさすがに周囲のメンバーは驚いていた。間違って自分達も切られたりしないかと。