7 会合 2

家を出てから程なくして雄輝は佐藤の家に到着した。
玄関を自動ドアよろしく「力」を使って佐藤の家のスライド式ドアを開ける雄輝。そこでまず目に入ったのは男物の靴が乱暴に散らかっている様子。それから一つだけ女性のものと思われる革靴がある。佐藤に母親ぐらいしか女性は居ないし、他の靴と同じくちょっと乱暴に脱ぎ捨てて置いてあるので間違いなくその女性の靴の持ち主は佐藤と一緒にいるだろう。
障子を開けた先が佐藤の部屋だった。和室の部屋を佐藤が自分の部屋として使っている。なので、中から話し声などが聞こえてくる。全員女性の声だ。
「よっ」
雄輝は部屋に顔をのぞかせる。
知った顔は佐藤しか居ない。と言っても、病院で彼(というより彼女)の顔を見て以来である。他は知らない女性ばかりだが検討はつく。全員川上村在住の同級生だ。
「誰?」
と最初に言ったのは佐藤の右隣に座っている女性。いかにもちょっと前まで男でしたという上下が男性モノの黒ジャージに身を包んでいる。
「白石だよ、白石」
「え、マジで?」
「可愛い」
「うわ…ちっせぇ〜」
方々から声が聞こえる。
雄輝は可愛いといわれて果たして喜ぶべきか悲しむべきか考えていた。それと、可愛いと言っている彼女等も雄輝から見て十分に可愛かった。
「えっと、全員知り合い…だよね?」
あえてその質問をする雄輝。佐藤以外は女性化してから会った事の無い人ばかりだ。そういう疑いを持ってしまうのも無理はない。
「じゃあ一人ずつ自己紹介」と佐藤が言う。
「なんで今更自己紹介なんだよ」と隣の女性が言う。
「ほら名前言うだけでいいじゃん」
「ああ、そうだね」
そして一人ずつ名前を言っていく。雄輝の知った名前ばかりなのは当然だが、全員が元男性から想像つかないほどに変化していて、もし雄輝の友達だと別の女性が偽って紛れ込んでいてもわからないだろう。
一通り自己紹介が終わったところで、佐藤が仕切る。
「今日集まってもらったのは…」
「まず女モノの服を買おうって話?」
「いやいやいや、違げーよ」
「ああ、だよね」
女モノの服を買う以外の理由で集まらなければならなかった事は、そこにいるメンバー全員が判っていた。あえて空気を和ませる為に言ったジョークなだけだ。本当に放さなければならないことは、身体に起こった変化についてだった。