15 正義 1

電脳街の路上に行き交う人々の流れ。
まるで透明な壁でもあるかのように、電脳街の中にある全てのものが、その外の街とは異質な風貌を見せている。
多くの人はドロイドを召使いとして側に添わせて、買い物が終わるとその重い電化製品を運ぶドロイドの姿がちらほら見え始める。パッド型PCや携帯を路上で広げて、個人の世界に入る者もいる。そこでは独特な常識が存在し、そしてそこに行き交う人々は何よりその常識を溺愛していた。
物流と情報伝達手段の発達で多くの人々が1都市に集中するよりも、ローカルを意識する時代、それでも島根という田舎認識は消えないのか、自分の住む場所に起こる事件には大きな興味がそそられていた。路上に設置されたホログラムビジョンからは、その日の県内ローカルニュースが流れ始める。今話題となっている「亡霊」の続報だった。
続け様に見つかっている女性の遺体。そして学生と社会人の男性を狙った連続殺人。
ある週刊誌では殺された男性の身元を調べ上げて、ほぼ全員が所謂『不良』レッテルを貼られていた人間であることを突き止めた。地元湖小山市街に流れる噂、そこから筋書きを立ててみせた。
殺された男性達は、先の女性の連続殺人の一件で犯行に加担した人間であり、そもそも殺されること自体に復讐という理由があった事。そしてネットで流れた映像に映る姿の見えない暗殺者。エレベータ入り口で設置された防犯カメラに映ったのは、光の線が入り混じる中で切り刻まれる男の姿だった。
この事件の話になれば、人々の多くは一つの結論を導き出す。
『亡霊は殺された女性の恨みの念で、復讐をしている』
『殺された男達は、殺されて当然の事をしていた』
あくまでそれは噂を元にしたものだが。