25 サイト・ログ 6

「見つけましたよ」
数時間が経過してようやく、小山内はバックアップデータの中から陸風会に関するものを抽出したようだった。
「どうれ、みようかね」
重い腰を上げて東屋がディスプレイを見る。
「結局見つかったのはここだけですね。陸風会のメンバーの本名や住所、職業が暴露されているところです。これは裁判が行われたあの時期のメンバーという事になりますね、時期的には」
「ふむ、ちょっと一番上から見てみよう」
東屋が「一番上から」と言ったのは、小山内が掲示板の途中で何者かが自分が調べた陸風会のデータを暴露している部分を画面に表示していたからだ。話の流れを掴むために一番上に移動させたようで、東屋はその掲示板に関わっている適当に付けられたハンドルネーム同士の会話を読んでいっている。
「この『怒髪天』というハンドルの奴は、いきなり出てきて陸風会の個人情報を暴露しておるみたいだの」
「そうみたいですね…」
「こうやって個人情報が暴露されるというのは、どっから手に入れてきとるんかの?」
「まぁ、簡単なものならネットワークに検索を掛けてですね。それでは大抵が見つかりませんから、次はアカーシャクロニクルのようなツールを使って、ネットワーク上に流れている情報をダンプしていくという事になりますね」
「この怒髪天というハンドルの者は、これ以降はなんと話しておるかわかるかの?」
「えっと…」
小山内はしばしコンピュータを操作して、怒髪天というハンドルの者が書き込んだと思われる内容だけを抽出した。そこには他のハンドルの者から何かを質問されて、それに答えている怒髪天の書き込みが並んでいる。
「ふぅむ…どうやらこいつはたまたま陸風会のデータをどこかで拾ったわけではなさそうだな。ずいぶんと調べておるのか、それとも陸風会内部の人間か」
「ちょっと待ってくださいね。この怒髪天って人と話している人を全部洗いだしてみましょう。話の流れがわかりそう」
「うん」
小山内がしばらく操作したのち、画面には会話の順で怒髪天と他のハンドルが交えている話がタイムラインとして表示されるように切り替わった。
「やっぱりこの怒髪天って人が関わっているんですかね?」
「そうかも知れないし、そうでないかも知れない…怒髪天の口調からすると…これはわしのカンじゃが、自分が知っている事をただべらべらと話して、人の関心を集めておもしろがる人種はいるんじゃ。この怒髪天というハンドルネームの者もそういうのだろう。それよりも、色々と質問してくるのが気になるなぁ。この、バベルという名前の者、陸風会についても色々とこの怒髪天に質問しておるな」
「…そうですね」
「わしはこいつのほうが気になる」
「バベルですか?」
「あぁ」
「確かに…陸風会の個人情報が暴露された後に発言が目立っていますね。色々と聞いてきてますし」
「コンピュータの世界っていうのは、この発言からどこの誰によるものなのかを知ることは出来るんかの?」
「ん〜…ちょっと難しいですけど、やってみます。ただ、古いデータですから出来るかどうかもわからないし、時間が掛かるかもしれませんがいいですか?…」
「ああ、うん、もちろん。お願いするよ」
「時間がかかるっていうのも、ちょっと待てばじゃなくて、数日とかですよ?」
「うんうん、構わんよ。出来ることをやってくれ」
「では…ちょっとまずはここの機械を持って帰る事の相談からしなきゃいけませんね…」