25 サイト・ログ 5

助手席にはいつものように東屋が座り、運転席は開いている。エンジンは掛けっぱなし。停車中だった。
急いで駆けこんでくる小山内は何やら様々な電子機器を持っていてそれを無造作に助手席後ろの後部座席へと放り込む。その様子を「そんな乱暴に扱っていいのか?」と口には出さないが言いたそうな表情で東屋が見ている。
「それで、あれから何かつかめたのかの?」
東屋が尋ねる。
「あ、はい。掲示板のバックアップをしているサイトに、陸風会の会員不審死が起きた頃のバックアップが残っていたと聞いたんですけど、保管している媒体がネットに接続されていないらしくて、今から現地に行って解析してみなきゃならないんです」
「よくわからんが、聞き込みみたいなもんかの?」
「そうですね」
車は街の中心の雑居ビルが集合している箇所へと止まる。目的の場所は分かっているが駐車場がないのだ。うろうろと周囲を探しまわった挙句にビル駐車場へと止めて長い距離を歩く。ようやく雑居ビルへ到着する。
いくつものオフィスがオフィス内には収まっており、その一室に小さな看板が掛けてある。英語名でSilverStoneとある。外資系の企業のようにも見える。
「ふむ…ここかい?」
「はい」
扉を開けて警察手帳を見せると、オフィスに居た作業服姿の男達のうち一人が立ち上がって「こちらです」と奥の部屋へと案内する。
薄暗い部屋には様々なコンピュータ機器が所狭しと置かれている。並んでいるという状況ではない。積み重ねられていて、互いが発する熱で部屋は暖房無しでも冬は問題ない、それどころか冬ですら冷房が必要なほとだった。
「この奥にある、これです」
と足の踏み場もない為近づけないが、遠くから「アレ」と指差す先には埃をかぶっている何かしらの機械が一台ほど、電源を入れられてない状態で放置されていた。コードも抜けている。
「あぁ〜…」
と小山内のため息混じりの声が漏れた。
「ちょっと解析の準備をしますので」
小山内の仕事は埃が積もっている汚いコンピュータ機器の上に自分が持ってきていた解析用の機器を置くところから始まった。