25 サイト・ログ 4

メールや電話でのやり取りを重ねた後、小山内の端末は検索サイトのバックアップデバイスへのアクセスが出来る状態となった。警察特権である。
眠たい目を擦りながら小山内は先ほどから繰り返してきた同じ事を、バックアップデバイスへ接続された端末から行う。そして小山内が閲覧を望んでいた情報の断片が現れ始めた。
「『陸風会を許すな』…か。サイトじゃなくて掲示板の一つだったのね…って…」
検索サイトのバックアップデバイスにはネットワーク上のデータの一時的なスナップショットが蓄積されており、さきほど小山内が掲示板で情報を募集した際に返信があった、その返信と同じ内容の文章がそこにあった。「【陸風会】…企業にクレームを言い裁判などで金をむしり取るクズな連中の集まりです。裏ではヤクザが絡んで」それだけではなく、陸風会が企業相手に起こしている裁判の一覧と、それに関係する担当者の一覧もある。
「なにこれ…あぁ。そっか…私が最近の掲示板で見かけてたのは実際に裁判が行われて陸風会が勝訴している案件だけだったのね。そうか、そうよね」
小山内は自分の中で一つの結論が出ていた。
陸風会に関するブラフのうち、「今の」掲示板に流布されているものは陸風会を潰せるだけの理由付けがあるものばかり。つまり、陸風会が訴訟を取りやめたものや、そもそも訴訟すら起こしていないものについてわざわざ「今の」掲示板に流布する必要はないのだ。それは繰り返されてきたものだったと考えられた。『陸風会を許さない会』などではなく、『陸風会を許すな』という一つの主張をまとめているだけであって、何かの団体がそこにあるわけではないのだ。
「となると…難しいわね」
後は小山内が警察官として検索サイトに過去データの問い合わせをしていたと同じ事を、「掲示板」に対して行うだけだった。『陸風会を許すな』と呼ばれているまとめサイトを最も多く参照していると思われる掲示板に対して。
小山内は端末の電源をシャットダウンした。
「残りは明日にするかな」