25 サイト・ログ 2

「はぁ…」
深夜の1時を過ぎた頃、小山内はそろそろ帰ろうと腰を上げた。そこで初めて残っているのは自分だけという状況を知る。それが一気に疲れを呼ぶという一つのアクションでもある。
いくつかの掲示板に「陸風会を潰そうとした人がいるのではないか?」という内容のメッセージを残す。その返答が返っていないか確認してその日の業務を終えようとした。
「あ」
返答があった。
だがそこにあった返答には、よく見るような内容のメッセージである。
「企業ゴロ【陸風会】…企業にクレームを言い裁判などで金をむしり取るクズな連中の集まりです。裏ではヤクザが絡んでいるとの話も?」
「ん〜…それはもう知ってるんだけどね〜」
内容的には小山内自身に出したメッセージではなく、その掲示板を見る人全員に向けて「陸風会」の説明をしているだけのようでもある。だがせっかく情報を提供してくれたのだ。小山内はお礼も含めて、さらに情報提供者に質問の追い打ちを掛ける。
「知りたいのは陸風会を潰そうとしていた人達が利用していたと思われるサイトについてです」
そのメッセージを送信してから端末の電源をオフにしようとした。その時、どうやらネットの向こうでは相手は小山内のメッセージをリアルタイムで見ていたようで、すぐさまメッセージを返信してきた。
陸風会って、随分前の話を出すなぁ」
という前置きを置きながら、
「サイトは無くなったんだろうし検索しても出てこないと思うよ。もう随分時間経ってるし。俺もサイトのログは取ってないな」
「サイトのログはどこかに残ってないのですか?」
「検索サイトが結果のバックアップを取ってるのならそっちにあるかもね。前は事件の調査か何かでうん十年前のログを警察が要求してたような。一般人は頼んでも見せてくれないと思うよ」
小山内は頭のなかで手詰まりというキーワードが浮かんだ。
「あーもう。あと少しなのに」
端末の電源を切り荷物をまとめる。もう帰ろう、と思ったのだ。
だがふと、何か引っ掛かるものがあったのか、「ん?」と言い、しばらく電源を切った何も映らないディスプレイを見る。当たり前だがそこにはあ小山内自身の顔が反射で映っている。
「あ、私、警察じゃん…」