12 ごまかし 8

堀江は殺人課の刑事達と話す場を机の前から会議室へと換えた。
オフィスの他の課からの視線を考慮した結果だ。
「政府からの厳重な処罰が与えられるだろうな。最悪は殺人課の人間全員に。実質、処罰なんて対した事などないんだよ。今の職を辞めさせられる程度か。だが…処罰以外ではどうなるか?不正行為をしていたあなた達の実名が公開される。日本中の人々に、『私たちは法の番人でありながら、権限を利用して犯罪の手助けをしておりました』と報告することになる。いいか?日本国民は警察官に『いつもごくろうさまです』ってニヘラニヘラしてる奴ばかりじゃない。怨んでいる奴なんざ『ごまんと』いるだろうな」
そこまで話すと、堀江は用意されたお茶を一飲みした。
「さて。で、この状況を回避する方法がいくらか用意されている。一つは証拠を消すって事だ。あんたらの懐にある銃で俺の脳天をぶっ飛ばせばいい。俺を丸め込むって手もあるかね。ワイロを送るとかな」
一変した堀江の態度に驚きの視線を向ける刑事達。
「だが嘘を嘘で塗り固めるのは悪循環を生み出すだけだ。もう一つ手がある。不正行為に関与した人間全員を報告するのではなく、あんた方に命令した署長のだけを報告する。俺は署長全ての責任において、今回の不正行為が行われたと報告しよう。ただし、条件付きだがな」
「条件…とは?」