12 ごまかし 7

「2ヶ月程まえですが、この少年達が暴力事件を起こしている。で、私は勿論データベース内に彼らの履歴が残っていると思って、検索してみたんですが、補導履歴しか残っていない。事件を担当した派出所の警官に聞いたところ、島根県警の少年課で対処するので、この件は、データベースへの入力も含めて保留にして欲しいと言われた。と聞きました」
データベースへの入力端末の前で、暴力事件を起こした少年の補導履歴を表示しながら言う堀江。
刑事達は俯いたままになっている。
「実際に事件は起きておらず、登録を抹消したと言うなら良しとします。が、事件は起きているが、登録は抹消し、別で管理するというなら…ご存知の通り、不正行為です。で、その後、この事件の扱いは?」
「その件は…保留になっています」
「保留?保留…ですか。すいません。あまり警察の内部事情に詳しくないので。事件を保留にする、というのは私にはよく解りません。
データベースに履歴が残っていないわけですから、この事件を無かった事にする事は可能なわけですよね?」
俯く刑事達。
堀江がその俯いた刑事1人ずつの顔を冷ややかな視線で見下ろしながら歩いてまわるが、誰一人として顔を上げるものはいなかった。
「まぁ仮に保留だったことにするとしても…こいつら犯罪者が、保留にされている間何もしないというのは考えずらい。また何処かで暴力を振るうかも?何処かで麻薬を売るかもしれない。女を犯すかもしれなければ、人を殺すかもしれない。それが予想されていながら、勿論、住所氏名を知っていながら警察は何もせず、傍観していることにもなる。ではないですかね?」
「署長からの命令で…事件を保留にするようにと」
「明らかに、不正行為だな」
堀江は冷やかに言い放った。