12 ごまかし 4

「金下。俺だ」
堀江はタクシーの中から携帯で話している。
「どうも根回しをしているみたいだ。狙った通りだ。でな、監査権限を貰ってくれないか?小林さん居ただろ」
「小林さん?誰っすか?」
「バカ。監査の時にお世話になった人だよ。国防省の」
「あぁぁ…」
金下は暫く考えている。
監査権限とは警察に対して不正が無いか調査できる権限である。
国防省では定期的な監査を警察に対して行っているが、堀江のような元軍人等の"部外者"が警察と連携して調査をする現在では、監査も不定期に実施されるようになった。それだけ、警察が身内の中だけで完結してしまう事象が多数存在したのだ。
「小林さんっすね。でも何で?」
「匂うんだよ。県警の方々がプンプン匂うんだよ。殴りこみに行って来る」
「担当事件の方はどうなってんすか?」
「金下。仕事ってのは、『やれ』と言われた事以上の結果を残すもんだぜ?疑問点ってのはシラミ潰しに白黒はっきりさせないと今夜旨い夕飯食えんだろ?」
「俺も行きましょうか?」
「そうだな。お前も来れたら来いよ」