12 ごまかし 3

堀江は湖小山商店街の派出所に来ていた。
「あぁ、お構いなく。ちょっと気になることがあって立ち寄っただけなので…」
「ま、どぞ、こちらへ」
長椅子を勧められる堀江。そこに特に遠慮もせずどっかりと座る。安っぽい小さなテーブルを挟んで派出所の警察官と思われる人間と話す。
「気になることというのは…?」
「以前ここで、ある少年達の補導記録に関して調べてもらったと思うのですが。その記録内容に…どうも現実と異なる点がありまして」
「というと…?」
「商店街にあるゲームセンター。あの前の公道で2ヶ月ぐらい前に暴行事件が起きているらしいんですよ。ゲームセンターの店員に聞いたんですがね。数人の少年達が…まぁその、『路上生活者』にですね、暴力を振るっていたと。店員達は止めに入って同じように暴行を受けて。結局、犯人たちは逃げたということなんですが。心当たりはないですか?」
「えぇ、ありますよ」
「その記録が、データベースに無いと言うのは…?」
「え、あぁ。逃げた少年達の顔はわれてまして…一旦登録はしたんですがね。県警の方から登録を削除するよう言われまして」
「登録を削除するように…?」
堀江は少し笑い、言う。
あまりにも意外な事に対する、『信じられない』という笑い。
「え、えぇ…本署の少年課のほうで対応を考えているので一旦登録は保留にしてほしいと」
「少年課?何ですかそれは」
「少年犯罪を専門に扱う課が出来たと聞いているのですが」
「他県の県警には無い課ですなぁ…」
堀江は笑う。同じ様に警官も苦笑いをする。
「その少年達の今後の対応は少年課で行うので、後は任せておいて欲しいと言われましてね。多発する少年犯罪に専門の課が設けられた、というのではないかと思いますがね。私としては、なんとも腑に落ちないんですよ」
「そうですか…。今日はどうもありがとうございました。
ちょっと県警のほうで詳しいことを聞いてみるとします」
「あ、はい。お疲れ様です」