11 共通点 2

「こいつらは…山小屋の惨殺、そして河川に落下したワゴンから血液を採取して、DNAで検索を掛けて一致した結果だ。こっから共通点を洗い出す」
白板に向かい捜査官を前に説明する堀江。
汗をかき、うちわで必死に扇ぐ金下を除いて、その場の雰囲気は神妙だ。
「まず最初に、こいつらは全員、湖小山市在住だ。第2に、こいつら全員、補導暦がある。これが重要だ。万引き、暴走行為、恐喝や…レイプ。あえて、『殺された』と言おう。この『殺された』奴等は全員、人間の屑どもだ」
『人間の屑』…その大胆な発言に刑事達はニヤける。
「こいつらクズどもが生前何をしていたが、それは後で詳しく判るだろう。今判っていることは、1人は山小屋で『サイコロステーキ』になり、残りの奴等は川原で『ハンバーグ』になったという事だ」
押し殺された笑いが小部屋に響く。
金下は堀江に先程印刷したもう一枚の印刷物を手渡す。それには金下の汗がべっとりと付いている。
堀江は嫌悪の表情を見せるとハンカチでその汗を拭き取った。
「すんません…」
金下は申し訳なさそうに軽く頭を下げた。
「そしてご周知の通り、今日、もう1人被害者が追加された。市内のマンション1階のエレベーター手前で3枚に『おろされていた』。これらの連続殺人は、共通点がある。犯人は非常に切れやすい刃物でターゲットを切り刻んでいることだ。人間業とは思えない正確さでな」
そう言うと、堀江は数枚の写真を中央のテーブルに投げる。そこには惨殺された被害者の様子が映っている。身体が輪切りにされた死体、ミンチに近い状態で赤黒く焦げた肉片、そして魚の様に3枚におろされた死体。
交通事故等で目に掛かる事故現場の写真に同種の残酷な写真もあるだろう。だがそこにある写真はそれらとは明らかに異なっている。あくまで計算された形に収まっている。それは芸術の域にも触れるものだ。
事故のように偶然から産み出されない結果がそこにあるのだ。