19 ベリィド・ドキュメント 2

青井と東屋が向かった先は資料室と書かれた札が掛けてある部屋だった。そこはサーバルームと同じく冷房がやたらと強い部屋だ。加えて薄暗さが余計に部屋から熱を奪っているようだった。
東屋が物珍しそうに棚に置かれているファイルなどを見て回る。
そして一言、
「資料室って、まさに資料室って感じだね」
「どういうのを想像してたんだ?」
「だって何でもデータ化している時代でしょ。こうやって紙とかの媒体で残してるなんて予想もしてなかったよ。まぁ、俺のじいちゃんが警察署の資料室の話をしたことあるけど、あれは何百年も前の事件の資料とかも紙で保管されてるとか言ってたっけ。それに比べればまだましか」
「世の中にはデータ化したがらない奴がいるんだよ。データ化したがらない病って奴だ」
「へぇ。なにその病気?」
「まぁ、気持ちもわからなくもないけどな。例えばあれだ。お前が大好きなファーストフードがあるだろ。アレをデータ化して、栄養だけチューブで血管から突っ込まれたらどう思う?」
「そりゃ食べた気にならないね」
「そういうもんだ。紙やらで資料を残さないと作ったきになんないって輩が少なからずいるんだよ、どこの会社にも。ほんと、はた迷惑な話だ」
「それじゃ、ここの資料って全部LOSシステム開発の資料?」
「大部分は電子化されてるよ。ここにあるのはその残骸。ベータ版時代の資料もひょっとしたらこの紙の中に入ってるかもな。まぁ、入って無い事を祈れ」
「ええ!マジでこっから調べるの?」
「ん〜。俺もさすがにこの中に入っているとは思ってないよ。データ化してオンラインにさせてると資料を誰かにコピーされるかもしれんからっていう理由でこうやってネットワークから隔離された場所に保管されている資料もある、って話。ベータ版の時代の資料はほぼ全部外にあるはずなんだけど、一応ここで調べたほうがいいだろう。ここはまさにベータ版時代そのものの資料が保管されている部屋なんだよ」
「さて、そんじゃ調べるか」
青井は部屋の隅に置かれている端末のキーボードを引っ張り出した。