9 報復者 9

みのりによって切断された男の足はアクセルを踏んだままの状態でその場所に固定された。ホースから吹き出るように血が吹き出していく。
「うわぁぁぁぁ!」
その両足を見ながら叫ぶ男。男の足は無情にもアクセルの重石になりどんどん車のスピードは上がる。
続いてみのりのブレードは男の両手を切断した。
ハンドルを握ったままの両腕がハンドルにぶら下がった。
「あとは神様が決める。あなたが死ぬべきか生きるべきか」
そのままみのりの姿は透明になり、沈んでいた助手席の椅子から気配が消えた。気配だけが後部座席に移り、そして空いた天井から消えた。
制御の効かなくなった車はカーブを曲がりきれず反対の車線に進入した。
男からは橋が見えた。河に架かる橋だ。
このまま車が走れば橋から河に転落する。50メートル近い谷底に落下する。それを予測してブレーキを作動させる安全装置も働かなかった。
偶然通りかかった鉄橋、偶然にも安全装置は作動せず、みのりの「神が決める」という言葉通り、何者かが男の意思に関係なく、死へと導いていった。
車は叫び声を撒き散らしながら、崖から川原に転落した。
そして轟音を上げ爆発した。