9 報復者 2

「捕まえた!」
目前の男に気を取られた少女は口を塞がれ、地面に付いていた足は離れた。後から別の男が少女を抱きかかえたのだ。
そのままワゴンに引摺りこまれる少女。
「んっ〜!」
叫ぼうとするが既に遅かった。
無情にもワゴンの扉は閉まり、既に車は進み始めていた。
「最高だぜ!」
その身体が一番大きい男は少女の唇を自分の唇で塞ぐと音を立てながらそれを吸った。
暴れて身体をよじるが、その男の太い腕からは逃れることは出来なかった。その少女の頬からは涙がぽろぽろと零れ落ちた。
「ガキじゃねぇか…お前の趣味だろ」
隣に座った背の低い男は大男の腕に捕まっている少女の髪を引っ張って言う。
「これぐらいのガキが女の一生の中で一番輝いているんだよ」
少女の住むマンションは路地を数10メートル歩けばそこにあった。
ほんの後少しでマンションの自宅に帰り夕食を母親と父親、自分の3人で一緒に食べていたのだ。だがそのごく普通の未来が今は無い。マンションは通り過ぎ、わけも解らず男達の運転する車に乗せられて運ばれていく。ワゴンの後のドアからは自宅のマンションがどんどん遠ざかるのが見えた。
(お母さん!)
心の中で叫ぶが、その心は男達の不敵な笑い声に掻き乱された。