8 魔法少女ミミ 8

芝川が部屋から去ってからみのり一人になった部屋。
みのりは写真を見ていた。
みのりとみどりが嬉しそうに笑っている写真。それはみどりが部屋に来たときに一緒に撮ったものだった。その笑顔を見つめているとみのりの表情も綻んでくるが、綻んだ表情は次第に寂しい顔へと変わる。
(この笑顔は戻ってこない)
そう思っただけで、きつく胸が締め付けられ涙が溢れ出そうになる。
(復讐なんて誰も望んでいないかも知れない。みどりさんも。だから奇麗事は言わない。これは自分の為の復讐)
スーツのチャックを閉め腰にあるステルス機能の端子をソケットに差し込む。スーツが小さな電子音を立ててみのりの体型に合わせるように縮み、そして青白い光が身体を包む。
鏡の前でみのりは目蓋を閉じ、ゆっくりと眼鏡を外した。
「ずっと独りだと思ってた」
「…これからも独りだと思った」
「でもみどりさんに会えて、自分が独りじゃ無い事がわかったよ」
「慰めあったり、励ましたりして助け合うことや、泣いたり笑ったり、自分の気持ちを相手に示すことが、自分にも許されるんだって解った」
「生まれて初めて『人』として生きることが出来た気がする」
鏡の前のみのりの姿は次第に薄くなり、透けて、そして消えた。そして「誰もいなくなった部屋」でブレードがベルトに装着される音が静かに響いた。
「ありがとう、みどりさん」
姿を持たない声が部屋に響いた。