8 魔法少女ミミ 6

(凄い…)
みのりは目隠しのまま自分の手を見つめる。
ドロイドのジャブを受け止めた手、体当たりをした肩、それらには自分が予想した結果は無い。硬い装甲に体当たりをすれば肩は酷く痛むはずだが、まるで触れていないかのように僅かな感触しかない。
ふと、みのりはスティックの電源を入れたままであることを思い出した。目隠しのままスティックの位置が解る。スティックを取ろうと思ったその瞬間、その手にはスティックが握られた。
「あれ?」
誰かがスティックを拾って渡してくれたのだと思った。目隠しを外すみのり。しかし周りには誰も居ない。目隠しでも気配を察知出来なかった、だから「誰も居ない」のは解っていた。
その時、すべてが解った。
むしろ、既に知っていた。
身体が全てを知っていながら、心では否定していた「全て」
ギャラリーからまたどよめきが響き渡る。
もう一つのスティックを見つめるみのり。それは宙を浮かび、手に収まった。両手に握られたスティックはみのりの手を離れ宙に浮かぶ。まるで手品のように、触れていないスティックが宙をクルクルと周る。手に触れていない物がみのりの意思だけで自由に動く。
後ろで音がした。
先ほど壁に打ち付けられ停止していたドロイドが起き上がる音。起き上がるとみのり目掛けて走り向かってくる。プログラムされたフォームそのままに、軽くジャンプすると身体を捻り回し蹴りでみのりを攻撃する。だがその動きはみのりを前に止まった。
ギャラリーからはもう、「どよめき」は聞こえなかった。
全員、口を半開きに止まったドロイドを見ていた。
電源切れた訳でもない。みのりが蹴りをガードした訳でもない。ドロイドは地面から20センチの空中に、文字通り「止まった」