8 魔法少女ミミ 5

倉庫から引っ張り出してきたのは格闘の練習用ドロイドだった。空手、柔道、ボクシング。様々なフォームがインプットされている。
みのりはドロイドの背中にある幾つかのスイッチを押す。
「おいおい…マジかよ」
ギャラリーにどよめきが響き渡った。
みのりはタオルで目を覆うとそのまま頭の後ろで縛った。その目隠しの状態でドロイドのスタートコールが響く。
止まっていた電源が入り、動きは人間そのままにみのりに近付く。フォームがボクシングのスタイルになる。
拳で打撃をするが、みのりはいとも簡単にそれをかわす。右、左、右、ジャブは次第にその速度を速める。ドロイドに備わっている学習機能で対戦相手のヒット判定が無ければレベルが上昇されるが、まったくヒットしない相手を前にレベルは最大まで上がった。
機械が自分自身をコントロール出来る最大の動き、それは通常の人間なら運良く1発を避けることが出来ても連続で避けきることは不可能だった。だがみのりの身体にはかすりもしない。目隠しで周りが見えないはずのみのりだ。
1発、2発かわし、3発目にその腕をみのりが捕らえた。振り払おうと暴れるが、腕を持ったままみのりの蹴りが脇腹に命中した。その持った腕を軸に身体が宙を回転するドロイド。1回転して元の位置に戻るとみのりは懐に飛び込んで肩で体当たりした。
ドロイドはアリーナの壁まで跳ね飛ばされ、「人形」のようにパタりと側に倒れた。