8 魔法少女ミミ 4

「凄い動きをする人がいる」
アリーナで静かな注目を集めていた。
アリーナが閉館する深夜、一部の人はアリーナへと足を運ぶ。ある女性が一人練習に浸っているのを見るために。
みのりだった。
「何の動きかな?新体操かなにか?」
ギャラリーは口々にみのりを噂する。
みのりの握る2本の棒は新体操で使われる発光スティックだった。発光することで動きを把握出来るスティックだが、みのりの意図はブレードに見立ててその動きを把握する為だった。
触れる個所は柄の部分のみ。それ以外の部分、発光している部分は常にレーザーが出力されており、触れば掌は無くなる。
だがそんな訓練もあっという間に習得できた。
みのりにはどんなことでもできる自信があったが、何故なのかは判らなかった。足の筋肉を鍛えているわけでもないのに、軽く3メートルをジャンプするほどの能力があったり、頭でイメージしただけの宙返りが1回目で成功したり、そしてなによりも、レーザーブレードに見立てたスティックは動きを把握する訓練をするまでもなく使いこなせていたのだ。
(あの時と同じ…)
不思議な感覚だった。
身体の動きや、周囲の物体の位置までもが頭の中に読み込まれる。まるで体中に目がついており、360度すべてを常に見ているように。
(もしかしたら…)
何かを思いついたようにみのりはアリーナの倉庫に消えた。それを見届けるとギャラリーは溜息を付いた。
「何、あの人…オリンピックの選手か何か?」
「知らない。武術のフォームにも見えたけど」
暫くするとギャラリーの視線は倉庫から出てきたみのりに集中した。