8 魔法少女ミミ 3

暗い部屋の思い出はアニメオタクである吉村を思い出させる。だが今となってはそれらすべてが「あるべくしてあった」ようにさえ思える。
吉村秀人は魔法少女ミミの揺ぎ無い正義を感じていた。だがそこから学び取った正義があったとしてもそれはあくまでアニメの世界。現実には勇気のかけらさえない自分がいた。
今すべてがスタート地点に戻ったように感じていた。
(本当の勇気を手に入れた気がする。今なら何でも出来る)
みのりは自宅の押入の奥から引越しから一度も開かれていないダンボールを空けた。そこには魔法少女ミミに関する同人誌が何冊か入っている。その同人誌の内一冊を取りページを捲る。そこには攻撃と防御のフォームや武器の扱いなど様々なレシピが載っていた。
魔法少女ミミの熱狂的なファンの中には武道に精通したものもいた。そういった武道家はテレビシリーズには存在しない様々な技や戦闘フォームを編み出し、可愛らしい絵で同人誌を飾ったのだ。ここまで来ると半場狂っている。
だがそれらのフォーム一つ一つは専門家が考え出しただけあって、どれも生半可には書き綴られてはいない。多少は人間には不可能と思われる動きもあるが。
みのりは同人誌を持ちジムへ向かった。
芝川の言葉が脳裏をかすめる。
「ドロイドの武器を人向けに改良するから時間が欲しい。全部接近戦武器、威力はあっても使い方間違えると怪我じゃ済まないから気を付けて」