7 霧雨の炎 2

みのりはその日のニュースから目を離せなかった。ニュースチャンネルでは延々と日本各地で起こったニュースを繰り返し流し続けた。何かの間違いならニュースの中にはみのりが予想するイメージは現れない。
11:00。
まだ小雨は止まない。朝の轟音よりも小さな音の筈なのに、その小雨はみのりの神経を逆撫でさせた。
ニュース番組が地方のニュースへと変わる。
(何かの間違いなら)
無情にもみのりのその望みは掻き消された。
小山市の港、工場跡地でドラム缶の中から女性の死体が発見された。鑑定の結果、市民IDとDNAが一致し遺体は木村みどりのものだと判明した。特殊火薬で焼かれ短時間で完全に炭化するはずだったが、突然降り出した雨がそれを止めた。
呆然とニュースを聞き続けた。
涙は流れない。怒りも込み上げない。
それはみのりの心がその事実を否定しているからだった。
(みどりさんは昨日も出会った。いつもの犬を連れていた。いつもの気にもしないような毎日の出来事を離した。いつもの…だから今日もきっと犬を散歩に連れて行って、雨が止まないから…)