6 サッカーボール 2

「酷い!」
黙ってみておくことが出来ず、みのりは不良達に近付いた。
守山も慌ててそれに付いていく。
「ちょっと、や、やめなさい!その人が何をしたっていうの?」
その声を聞いた不良達は一斉にみのりの方を向いた。あっという間にみのりを取り囲む。取り囲まれてからみのりは後悔した。なんで止めろなんて言ったんだろう。後悔の心から恐怖に変わる。
「なんだ?あぁ?文句あんのかよ?」
「こいつ、あそこのゲーセンの店員の女じゃん」
そういわれて不良達の顔を見ると、以前みのりの勤めるゲームセンターに来たことのある連中だというのが判る。みのりのことを「かわいい」といって手出しした連中だった。
「あぁぁ…神様」
不良達の背後で声がした。
浮浪者の男が女を胸に抱きかかえて泣いている。女は歯が折れ、口から血を流していた。どうすることも出来ずに、ただ付き添っていた女の肩をさすっている。そして女は反応しなくなったのだ。死んだと思い嘆いていた。
「神様だぁ?いねえんだよそんなもん!」
叫んで蹴りを男に入れる不良。その顔には見覚えがある。不良達のリーダー風に見える男はみのりの高校時代の同級生の柳川だった。みのりをイジメていたグループのリーダーだった。
「警察呼びますよ!」
みのりは恐怖を振り切って怒鳴った。勿論、既に警察は呼んでいたが今すぐにでも止めさせないと瀕死の女性は死んでしまう。そう感じ取ったのだ。
「この女、拉致ってマワそうぜ」
ヘラヘラ薄ら笑いを浮かべた男がみのりの肩をつかんで、男のほうを向かせるとその胸を掴んだ。
「ちょ、ちょっと離して!」
みのりはその手を払いのけた。