6 サッカーボール 1

その日は夜からの勤務だった。
みのりはいつもの様に自転車でゲームセンターへ向かった。狭い路地を曲がると小さな自転車用の駐車場がある。そこに自転車を止めカギを付けていると表の商店街の方から声がする。
誰かが怒鳴る声だった。
商店街の方に近付くうちに怒鳴る声に混じって笑い声も聞こえる。見た限り不良と思える格好の数人の男が道の端の方に固まっている。
みのりは注意深く数人の男がいる側を通った。その男達の足の隙間から浮浪者のような汚い格好の年老いた男と女が横たわっている。その不良達は浮浪者2人に対して怒鳴ったり笑ったりしているようだ。
(警察…呼ばないと)
みのりは急いで勤め先のゲームセンターに駆け込むとカウンターの電話を取った。その様子を見て既に先に来ていた守山もただ事ではないと思い、店の外に出る。受話器を置くとみのりも店の外に出た。
「暴力ふるわれているみたいなの、あの不良達に囲まれてる人」
守山にも男達の足の隙間から年老いた2人の男女が見えた。
浮浪者の男の方は女のほうを守るように覆い被さるが、ヘラヘラと笑っている男がそれを引き剥がそうとしていた。引き剥がすと、すかさず蹴りを女の方に入れている。顔を蹴られた女は顔を覆い地面にうずくまった。