5 ロボットオタク 7

再びコーヒーを持つと、それに口を付けながら語る芝川。
「ドロイドのお陰で戦争に勝てたじゃない」
芝川は首を横に振り、そして黙って手も振った。
「そのドロイドが今ではテロもしている。皮肉だよ。ロボットに意思を持たせても所詮武器なんだ。それなら人がコントロールする武器のほうがいい」
モビルスーツ?」
「戦時中に国民政府議会のログを見ただろ?戦いに人を参加させることはナンセンスって結論さ。でも無条件に人を殺しまくるドロイドより、人間の兵士のほうが…あんな事態を招くことなんて無かっただろうにね」
「気にすることは無いよ。戦争なんだから」
少し疲れたのだろうか、芝川は両手で顔を覆ってから目元を擦った。
「今じゃ俺は悪魔呼ばわりさ…反吐が出るほど嫌だったけど、最近になって解って来たんだ」
「なにを?」
「俺の意思は別にしてもさ、俺には最低な武器を作るセンスがあるって。今考えたらよくあんなドロイド造ったなって」
みのりは溜息を付いた。
「人を傷つけない武器は武器じゃないよ。使う人の問題じゃない」
「後悔はしてないよ。今の職場に満足してるし。今度武器を作るなら、正しい心を持った人に使ってもらいたい」
「正しい心を持った人?でも人は傷つけてしまうよ」
「あぁ、承知の上さ。傷つけられるべき人に対する武器だよ」
カフェを出ると空は曇っていた。曇った空をぐるりと見渡すと、芝川は人込みに消えていった。帰り際に一言芝川は言った。
「何か困ったことがあったら、構わず俺を頼りにしていいよ」
みのりがバイトで生計をたてている事を知ってか、経済的にはゆとりのある芝川は援助は惜しまない様に振る舞った。
(本当に苦しんでいるのは芝川君なのに)
みのりは芝川の心の奥深くに刻まれている傷をどうすることもできない自分を悔やんだ。