5 ロボットオタク 5

吉村が学生時代、金に困って携帯電話の契約を解除したのを思い出していた。アパートの電話だけは辛うじて両親の契約なので残っていたのだ。芝川は携帯電話と取り出すと吉村の電話番号を一覧から選び電話をかける。
「その電話番号は使われておりません」
芝川は怪訝な顔で電話を切ると顎に手を当てて携帯電話を見つめた。
「あいつ、引っ越したのかな」
バッグからPCを取り出すと携帯電話とPCをコードで繋ぐ。携帯電話のスイッチをいくつか押す。PCの画面は緑色に発行した。いくつかキーを叩くとリストが表示されある個所で表示は止まった。そこには吉村の住所変更があった旨の内容と次住所での電話番号が記載されていた。
何食わぬ顔で吉村の新住所の電話番号に携帯から電話をかける芝川。
「はい、菅原です」
電話の向こうから聞こえてきたのは女性の声だ。
ハッとして携帯電話のディスプレイに表示されている番号と、PCのディスプレイのそれを比較する芝川。
だが番号はあっている。
「あの…吉村君はいます?」
電話の向こうの声は暫く止まった。芝川と電話の向こうの女性間に僅かな沈黙を置いた後、静かな声で女性が質問する。
「どなたですか?」
「あ、芝川と言います。この電話番号…あってますよね?」
「芝川君?」
(あいつの彼女か?)
暫く考えた芝川だったが、すぐに答えは見えた。
(あぁ…忘れてた。あいつ、川上村に住んでたんだ)
「吉村君?俺だよ、芝川だよ。おひさしぶり」
「あぁ、芝川君、おひさしぶりだね」
「吉村君やっぱし女になってたんだね。最初、誰かと思ったよ」
「うん、色々とあって。大変だったよ。それに前のアパートからは引っ越したんだ。何で電話番号わかったの?」
「いや、いつものアレだよ」
「あぁ、なるほど」
「そうだ。今、時間、都合付くなら会おうよ。久しぶりだし。あ、別に吉村君が女になったからって会おうと思ったんじゃ無いよ。仕事も忙しいのから外されて今は結構昔みたいにボーッと過ごしてるんだ。どう?都合付きそう?」
「いいよ〜どこで会う?」
「湖小山市の電脳街のノクターンってカフェ」