14 忘却の神殿 5

「んで、意見を聞かせてもらおうか、東屋」
椅子に踏ん反り返って腕を組んで、ちょっと喧嘩腰で東屋に言う青井。
それに対して東屋は落ち着いてはいない。彼の意見は最初からゼロだった。ただ、今やらなければならない最終目標はあげたけれども、それに至るまでの小さな目標はあげきれない。何をしたらいいのか判らない状態である。
「えーっと…」
「ほら、さっき話してたゲームの話だよ」と千葉教授が助け舟を出す。
「そうそう、ゲームだよ。えと、タロットに書かれていた文章を思い出してみよう。ほら、あのちょっと意味深なメッセージさ」
「これの事か?」と青井がモニターに記録をとっていたタロットのメッセージを表示させる。
『周囲を包む不穏な空気は全ての記憶を忘却の彼方へと放り去った。だが、強い思いに結ばれた二人の、繋いだ手と手を解こうとするものは居なかった。誰にも、二人の記憶は変えることができない』
「記憶を忘却の彼方へと…ってのはまさに今の状況ね。それで、それを解除する為のヒントが『強い思いに結ばれた二人の…』のところだよ。つまり、今忘却の彼方へと飛んじまってる記憶を元に戻せるヒントか、もしくは、忘却の彼方に飛んでしまわないパターンが『強い思いに結ばれた二人』ってことなのかもしれない」
「強い思いに結ばれた二人…如月と豊川さんの事か?」
「え?二人ってホモだったの?」
「いや、言ってみただけだ」
「そういう冗談は嫌いじゃないなぁ…」
「んで。その条件を満たさないといけないってんなら、あのダンジョンにたまたま入ったメンバーの誰かと誰かが強い思いで結ばれないと条件を満たしたことにならんということだな。随分と難易度が高いじゃないか」
「だろうね…ちょうどカードもタロットの7番目のカード…」
「なんだっけ?」
「『Lovers』…恋人だね」
「その、ゲームを純粋にプレイするって案なら、俺達に出来ることは?」
「ないよ。ゲームをするのは僕らじゃない。如月さん達だ」