14 忘却の神殿 2

風雅達はキムナイの村で忘却の神殿について詳しい者を連れて神殿前に来ていた。最初こそ同行するのを渋っていたその村人の男だったが、レッカ女王の指示なので仕方無しに入り口までは案内する事になったのだ。
「その神殿の中に入ったことはあるのか?」
ロイドは何気なくそんなことを村人に尋ねていた。
「入ったことはないよ。呪いがかかると言われてるからね」
「呪い、ねぇ…」
既にLOSの世界の真実について知りつつあったロイドは『呪い』というキーワードが非現実的なものとすぐに結びつけた。だから村人の男が言ったその言葉もLOSシステムの何かしらのイベントの一つと考えるのだ。
「風雅よぉ、『外の世界』の奴らに呪いの神殿…じゃなかった、忘却の神殿について調べてもらったのか?入ったら呪われるらしいぜ」
そう、ロイドは茶化すように言う。
「一応調べてもらった。この神殿は入ったら装置が動いて扉が閉まる。それを解除するには神殿の奥の台座にある装置を動かせばいいらしい。あくまで素人の冒険者をターゲットにした簡単な仕組みの神殿なんだよ」
「その簡単な仕組みの神殿がなんで『忘却の神殿』だなんて、大層な名前で呼ばれてるんだよ?」
「ああ。それは神殿の奥に進む途中にある数箇所のプレートの番号を記憶しておいて、台座にある装置のプレートを同じ番号にしなければならないからだろう。忘却という言葉は確かにオーバーだがな」
「へぇ〜…。知ってしまえばなんとも味気ないもんだな」
「ダンジョンがはじめての冒険者向けだ。そもそもこの場所には名前なんてない。誰かがその仕組みから連想する言葉でそのダンジョンをそう呼んだんだろうな」
風雅達は案内してくれた村人を残して神殿の中に入っていった。
風雅が言ったとおり、入ったと同時に装置が作動して扉が閉まった。突然動いた扉に驚いて心配そうな顔をしている村人。だがダンジョンの仕組みを既に知っている風雅にとっては無用の心配だった。