13 バベルの遺産 6

「よし。今の状況を整理してみよう。これは謎解きだぞ。ゲームだと思って考えてみようか、東屋」
青井はそう言って、ぽんと自らの膝を叩いて東屋に向き直った。
一方で東屋はにやりとしながら、
「ゲームと思ってって、ゲームじゃねーのコレ」
「ああそうだ。確かにゲームだ」
「まず、バベルの塔だっけ…あそこにはダンジョンはないし、ただの物資運搬通路だったはずだよ。つか、俺が居た時の話だけど」
「それはいい、置いといていい、お前が居たときの話で考えようか」
「そこにバベルって奴がいて、何かを調査してた?って話でしょ。まぁ、バベルってのは例のハッカーのバベルとは違うと思うけど」
「いや、それもいい。置いといて」
「え?」
「今は何一つ判ってないから、仮定の話だ。仮にそのバベルってのが本当にハッカーだとしたら」
「ええと…ハッカーだとしたら、研究ってよりも何か細工してたんじゃねーのかな。塔に」
「そうだな。そして現実の世界の人間でなければわからないもの…バーコードの文字を残した。つまり、バベルというハッカーは俺達がそこへ辿り着くことを予測してた。だからつまり…」
「俺達の目的も予測してた?」
「ああ」
しばらく二人の間を無言の空気が包む。その中で東屋はバーコードリーダーが読み取った文章を見ていた。
「『楽園に夜の帳が下りた』ここでいう楽園ってのは、シャングリラの事かな。シャングリラっていうのは東方神話での楽園を意味する言葉だから。そんで、『世界を歪ませ、運命を止めた』??なんだろ…世界ってのは閉鎖されたLOSシステムの事だとして、運命って?」
「ふむ。よくわからんな。それと、これは主語が無いがバベル自身がやったと言ってるのかな」
「ああ、なんかそんな感じだね」
「『正義でもなく、悪でもない、望んだ事をするだけ』ふむ。こりゃ犯罪者が弁護士に言う台詞みたいだな。善悪の判断なんてつきませんよ、ってか」
「『アルカナを解放せし時、閉ざされし世界は再び開かれる』…世界が開かれる。か。つまり、アルカナを解放すればLOSのシステムが復旧するって言いたいのかな。アルカナがタロットの大アルカナだとして、解放ってのは絵柄が無いタロットが最終的には絵柄が入ってくるんだろうかな」
「絵を描けって事か?」
青井がそう言うと、しばらく間をおいて東屋が言う。、
「いや…それは違うんじゃないかな。難解な文章を残した奴がそんな簡単な解決方法残してるとは思えないしさ」
「んじゃ、何だっていうんだよ」
「ん〜…仮に俺がゲームを作る側の人間だとして、一番面白い展開ってのは、そうだなぁ…このタロットってカードそれぞれに意味があるから、その意味と同じ内容の何かをすると解放されるって事にするかな」
「例えば?」
「例えば、0の愚者だとすると、すっげぇ愚かな事をしたらそれを検知して」
「あ!」
突然叫ぶ青井。そして、別の端末のキーボードを叩き始めた。