13 バベルの遺産 2

部屋に入る。
そこは奇妙な文字で書かれたパネルがいくつも並んでいる場所だった。
既に調査員がそれらのパネルについての記録を残しているようだ。それらの文字はゼノグラシアにあったものとは違うものだ。仮にこの塔がゼノグラシアへの物資の供給ラインだったとすれば、そこにゼノグラシア以外の文字があるのは奇妙な事だった。だが、レッカ女王が風雅達に知って欲しかったのはそれらのパネルではないようだ。
「これが何か判るか?」
女王が見せたものは10数枚のカードだった。
風雅がそれを受け取って一枚一枚をまじまじと見つめた。
「番号が書いてあるな。カードゲームのカードか?」
「カードゲーム?」
「あ、いや、自分達が住んでいた世界にあるゲームさ。番号や絵柄が書いてあるカードを用いて様々なゲームをするんだ。トランプかな、これは…いや、枚数が少なすぎるか」
枚数が少なすぎるだけではなく、本来ならどのカードにもあるはずの絵柄がない。右上に小さく番号だけが書かれたカードが21枚ほどある。
「ちょっと聞いてみよう」
「ん?誰にだ?」
「別の世界の人間に」
『青井さん、俺です』
『ん?ああ。今飯食ってた』
『マシン室で食べてもよくなったんです?』
『お前から通信があるのを考慮してな、常に待機できる態勢になってるんだよ。その代り飯をキーボードに落とさないようにラップで包まないといけなくなったけどね。あぁ、あとそれて、仲間が増えたぞ、ほら、自己紹介しろ』
『仲間?』
それから聞きなれた青井とは別の、声だけ聞けば若い男の声と取れる、声が聞こえた。通信相手が変わったのだ。
『あ、どうも、東屋です』
『ああ、如月だ。よろしく』
再び通信相手が変わった。
『で、なんだ?』
『ちょっと調べて欲しいことがあるのですが』
『ほう』
『自分の知識の範疇から外れてるものがあるんですよ』
『なんだ?』
『カードです。トランプぐらいのサイズ、いやトランプよりも少し大きいかな。魔法が掛かってはいるように見えます。全部で21枚あるからトランプとは違うみたいです。ただ、トランプと違って数字が右上にあるだけで絵柄がない』
『ふむ…』
現実世界のマシン室内。青井が東屋に聞く。
「そもそも、このゲームにカードっていうのはあったか?」
「…ないと思うけど」
「なんだろうな。21枚のカード」
「21枚…21枚のカードって言えば、タロット占いかな」
「ほほぉ、お前、占いなんてやるのか、意外と乙女チックな趣味持ってるな」
「ち、ちげーよ…他のゲームで出てきたからWikiで調べただけで」
東屋は顔を赤らめて否定した。