12 ゲーマー 4

雄二は卒業生名簿の住所の欄を見ている。
名前をみると顔が思い浮かんで、それからその友達がどういう進路を進んだのかという事も頭に思い浮かんだ。就職、大学、専門学校、就職…。最初こそ連絡をしようしたが、あらためて考えてみると平日の昼間に就職や大学への進路を進んだ友達に連絡するのはどうかと思ったのだ。
電脳の中の通信機能は待機のままになっていた。
(やっぱり俺と同じでまだ就職もなんもしてない奴にしてみよう)
彼の思う就職も何もしていない友達に電脳通信をすると、繋がらない。
(寝てるのか?)
家に居るであろうから、彼の親に通信してみる。
『はい、高坂です』
『高坂くんいますか?』
『東屋くん?』
『あ、はい』
『あら、お久しぶり。高校卒業以来ね』
『お久しぶりです。高坂くんは、今、出かけてます?』
『それが…ちょっと、大変な事になっちゃって』
『何かあったんですか?』
『それがね、ロードなんとかっていうネットワークゲームがあるでしょう?あれをやってたみたいなんだけど、ずっと寝たまま起きなくなっちゃって…お医者さんに生命維持措置をしてもらってたのよ』
『え?』
ロード・オブ・シャングリラ。それは東屋が以前までプレーしてたネットワークゲームだった。彼は少し前に飽きて別のゲームを始めたばかりだったのだが、彼の友達が同じゲームをプレーしてた事を知ったのは始めてである。
彼はすぐさまニュースの電脳通信をしたのだがなんらシステムトラブルがこのネットワークゲームで起きているニュースは見当たらない。
『そうですか…あの、家に行ってもいいです?』
『いいよ。でもうちの子、起きてないけどいい?』
『はい…』
それと平行してニュースサイトではなく、ネットコミュニティを検索するとLOSへログイン・ログアウトが出来なくなっているという情報が沢山あがっている。異常事態にも係わらずマスコミはどこもそれを報じていないという情報も。
「おいおい、なんなんだよ、これは」
雄二はパジャマのまま普段から生活しているが、それをさっさと脱ぎ捨てて外行きの服に着替える。ボロボロの財布やらを掴んで中の金を確認する。何も入っていないようにも見える。
「ちッ…」
舌打ちしたのち、彼は1階に滑り降りるように走って後、両親がタンス預金してる場所に向かうと中から紙幣を引っ張り出した。2千円ほど。
雄二は家を出た。