12 ゲーマー 1

小山内の運転する車は住宅街へと入っていく。
「お孫さんって歳はいくつなんです?」
「18かなぁ」
「あら、私と一つしか違わないじゃないですか」
「おぉ、やっぱりそうか。小山内さんを最初に見たときにそう思ったんだよ。孫と同じぐらいの年齢じゃないかって」
「お孫さんは今何をされてるんです?学生さんですか?」
「ん〜…18歳という年齢で学生か、はたまた働いているかすれば、わしも安心なんじゃがなぁ…『不肖』の孫でね…高校を卒業してからというものの、大学にも行かず、専門校にもいかず、かといって働きもせず、部屋に引き篭もってね」
「…そう、ですか…」
閑静な住宅街の一角に東屋の孫が住む家があった。
家の雰囲気からは中流階級の一般的な家庭という印象がある。
合鍵でドアを開けて中へと進む東屋の後を小山内がついていく。家の中は静かで両親は外出中のようだ。共働きというキーワードが小山内の頭には浮かんでくる。そして、働きもせずに部屋に引き篭もっている孫、というある意味一般的な家庭。
本当にこの家に東屋の孫がいるのか、という疑問が沸いてくるほどに静かであったが、2階へあがる階段を進むと、誰かがいる気配はしてくるのだ。ドアの向こうでわりと若い人間が聴くイメージのあるハードロックの重低音が、フロアを伝ってくるのがわかる。
東屋は2階の部屋の一室をコンコンとノックする。
「おじいちゃんだよ、ちょっと今日はお願いに来たんだ」
部屋の音はちょっと小さくなる。
もう一度東屋はコンコンとノックする。
「雄二にしか出来ない事なんだ。ちょっと聞いてはくれんかの?」
すると、部屋の中から、
「うるせぇ!クソジジイ!」
と怒鳴る声が聞こえた。苦笑いをする東屋。一瞬固まる小山内。
「『不肖』の孫でねぇ…」
と東屋はもう一度ノックしようとしたが、それを諦めた。