11 スポット・インスペクション 5

EAI社の玄関から出て駐車場へと向かう東屋と小山内の二人。
「どうじゃったかの?感想は」
「え?ん〜…犯人の検討は全然つかないって感じでしたね」
「ああ、うん。それもあるが、さっきの青井さんといったかな。彼の雰囲気は」
「雰囲気…ですか?」
「うむ」
「ああ、意外と協力的な人じゃないですか」
「協力的か。わしから見れば、精一杯の対応のように見えたよ。なんというか、切羽詰っておる。霧の中を手探りで進んでおるような。途中で目が泳いでおっただろう?」
「そうなんですか?」
「大人になればなるほど、人というのは自分を着飾っていくもんなんじゃよ。つまりな、それを礼節と言ったりもする。青井という企業人は今までお客さんと色々と修羅場を潜り抜けてきた。相手に自分の手の内を晒さないように、ポーカーフェイス鍛えておるんじゃろうな。だからそういう人間に対しては言葉だけを受け取っても答えは得られぬ時もある。表情だとか、ちょっとした仕草だとか、視線だとか。それは証拠として残せんのだが、捜査のカギになる」
「はい」
「それで、次はどこへいく?」
EAI社について調べに?」
「そうじゃな。だがその前に、ちょっと孫に会いにいく」
「え?何をしにいくんです?」
「捜査の協力をしてもらいにな」
「?」