11 スポット・インスペクション 4

「それでさっそくなんじゃが…」
「得をする奴は誰か、ですよね」
「うん」
「商売敵というのは短絡的ですかね…どうだろうかなぁ。このゲームはどっちかというと流行のゲームっていうより、馴染みのゲームなんですよ。バーチャル空間で遊ぶタイプのゲームっていうのはもう最近じゃ珍しくないし」
「ふむ…」
「あとは、あるかどうかわかりませんが、プレーヤー同士の争いですかね」
「ゲームなんじゃから、そういうもんじゃないかの?」
「いや。本気になってしまって現実とゲームの境目が無くなるというのならあるそうですがね。ただ、俺はあまりゲームそのものにはあまり詳しくないので詳しい話はわからんのですが」
「ん?あんたは開発者じゃないんかな?」
「ゲームシステムはわかるんですがね。まぁ、ゲーム内の勢力図だとか人間関係だとか、そういうのは作った人間よりもプレーヤーのほうが詳しいでしょう」
「っていうと、いまそのシステムに潜入しとる二人はその辺りは詳しいんかの?」
「…ん〜…詳しいかといえば、そうではないでしょうね」
「詳しい人間が潜入したほうがよかったんじゃないかね?」
「それは…そうなんですがね。なにぶん緊急事態って奴でして。それに、うちのLOSのシステムは色んな会社が共同で作ったもので、何度かバージョンアップが繰り返されてるんですよ。俺はその最初あたりでは係わっていますけど、じゃあその最初辺りから係わっている奴がすぐに捕まえられるかっていうと、今は別のシステム開発をしてたり、ひょっとしたら会社に在籍していなかったりと。俺と如月が運悪くすぐに連絡ついて、そんでうちの会社の契約もそういう契約になってたんでヘルプに駆けつけたわけなんですよね。だから、今、ここにいる人間でゲームに詳しい人間ってのはいませんね。実際」
「ふむ…」
東屋は俯いていた。
「どうかしたんです?」
「いや、まぁ、わしもすぐに連絡つくから呼ばれたんだろうなぁと思って」
「え?あぁ…」
「いや、いいんじゃ。別に。出来る事をするだけじゃな。すまん、時間を取らせたな。あいわかった。また何かあったら連絡します」
「いえいえ。こちらこそ、捜査に進展がありましたら連絡お願いしますよ。俺だって早く解決したいですし、ハッカーって奴がもしいて、何かやらかしたんでしたらそこからシステム復旧の手立てが練れる」