11 スポット・インスペクション 1

「まずは腹ごしらえだ。腹が減っては戦はできぬってな」
東屋は国道沿いのファーストフード・ドライブスルーを指差して言う。
「いいんですか?ジャンクフードでも?」
「ああ、うん。ジャンクフードがダメなら別の店でもいいよ」
「いえいえ、私は別に嫌いじゃないですよ。東屋さんがダメかと思って」
「そんな事はないと思うが。わしが若いころは刑事といえばジャンクフードだって教えられたもんだ。どこでも買えてどこでも食えて、すぐに食い終わるからのう」
小山内が運転する車はドライブスルーの中に入っていく。そこではアンドロイドの店員が不自然なほどの輝いた笑顔で支払いを受け取って、品物を手渡していく。
「なんだか海外の刑事ドラマみたいですね」
小山内は店員から受け取ったコーヒーとBLTサンドを東屋へ、自分はコーラとテリヤキチキンサンドを受け取った。
そのまま彼女が運転する車は、市内の公園の側に停まる。そこで二人、それぞれの昼食をモグモグと食べながら話をする。公園からは親子連れが遊んでいる声が聞こえてくる。時々、公園に入る人達が老人と若い女が二人で昼食を食べているのを見たりもした。
「まず事件が起きた時に昔の刑事達が何をやったか」
東屋はようやく冷めて飲める温度になったコーヒーを注意深くすすった。
「ミーティングですか?」
「それは今の刑事だの。昔の刑事はまず現場に向かったんだ」
「現場?…うーん…。でも既にサイバーポリスの同僚は現場に…と言っても、仮想空間の中ですけど、そこにいますよ」
「うん。まぁそうだな。では現実の世界の現場はどこかな?」
エレクトロニック・アーツ・インダストリー社?」
「そうだな。昼飯を食べ終わったらそこへ行こうかの」