9 オールド・ソルジャー 6

「うむ。あいわかった」
東屋は少し考えた後、そう言った。
「わしが教えるのはコンピュータ云々の捜査じゃないが、それでもいいかの?」
「はい!」
「わしが君のお父さんに教えた事も、君の父さんに教えられなかった事も、全部伝授しよう。大丈夫。日下の血をひくならいい刑事になれる」
「はい!」
「ただし、一つ、約束事がある」
「なんです?」
東屋は今まで朗らかに言っていたが、そこで一度顔を引き締めて言う。
「絶対に死ぬな」
小山内は東屋の気持ちを少しだけ理解したのか、同じ様に真剣なまなざしで彼を見ながら、
「はい」
と言った。
小山内の顔はそもそも母親似だったのだろう。だが、真面目な表情をした時、その顔にどこか日下の面影を感じた。
(日下、お前の娘はわしがきっちり守ってやる。だからお前もこの子を守ってやれ)
神や宗教や、運命や縁ですらもあまり信じていない東屋だったが、何故か定年退職後に呼び出された事や、呼び出された先に日下の娘が居た事は彼をどこかへと導いている何かを感じずには居られなかった。
(わしはまだお前から教わってない事があるんだろうな)