8 トモダチ 5

また気分が悪くなる夏美。
ちょうどゲームショップの前で数人の中学生達が学校帰りだった。
ゲームの話題に夢中になって、笑顔で話し合っている。それを見て夏美がどんどん気分が悪くなっていった。そしてとてつもなく不安な気持ちになった。
これだけ沢山の人がいるのに、自分が一人ぼっちになっているという不安。事実、夏美は今一人ぼっちだったのだ。クラスメートには嫌われて、両親でさえも夏美の事を信じていない。
(死にたい)
死んでしまえば誰もが一人ぼっちになる。最後は一人になる。だから自分も最後にめぐり合いたい。誰にも共通に訪れる死という結末を、今の世界から解き放ってくれる結末を夏美は求めていたのだ。
そんな時、目の前のショーウィンドウにはロード・オブ・シャングリラのデモムービーが表示されていた。現実には存在しない世界の煌びやかな衣装をきたアバターがいる。見た事もない動物がいる。モンスターがいる。そこは夏美にもう一つの、死以外の出口を示すものだった。
「テト…」
デモムービーの中には夏美が仮想空間で出会った「テト」と名付けた動物もいた。
気がつけば、夏美は店内に入っていて、ロード・オブ・シャングリラキャンペーンの「テト」と名付けた動物のぬいぐるみを購入していた。
「ずっと、一緒だよ。テト」