13 囚われの妹(リメイク) 3

俺とケイスケは家の近くにいた。
じゃあさっさと家に帰れよ、という話ではあるけれども、帰れない事情…つまり先程の続きになり、尾行が理由で帰れない。
ケイスケ曰く、家の周囲は一見すると普段となんの変哲もないけど、軍や警察が張り込んでていつでも帰ってきたケイスケと俺を取り押さえれるようスタンバイしているらしい。
と、言いながらケイスケは俺に双眼鏡を手渡して、
「向かいの家の糞野郎を見てみますにぃ!!!」
手にとってケイスケ宅向かい側のご近所様を双眼鏡で覗く俺。
普段そうしているようにゴルフの練習をしている…んだけど、どうも視線がフラフラと彷徨っている。そう、まるで、俺達の住む家をチラチラと視界の隅に入れながら器用にゴルフをするみたいに。
「確かに、ご近所様の向かいのご主人、チラチラとケイスケの家のほうを見ている感じはあるけど、でも今に始まったことでもなくて…普段からああいう感じだったような気もするよ?」
「ふ、普段からキミカちゃんのほうをジロジロと見ていたっていう事ですかォォォオァァァ!!!許さん!!全身の皮という皮を全部引剥して風が吹いても敏感になる身体にさせてやりたいですォ!!」
「まぁお隣のご主人、陰険な表情をしているからね〜…ん?何か…ゴルフをしながらブツブツ呟いているような…」
「やっぱりそうですォ!!」
「え?やっぱり?」
「あれは軍か警察がバックに居て、ボクちんの家を観察している様ですぉォァァァァ!!!ブツブツ呟いているのは小型のマイクがどこかに隠してあって、状況を逐次伝えているんですニィィィィ…(睨)…あンの野郎ゥ…警察と軍に魂を売りやがって、ぶっ殺してやる!!」
「元々こっち側の人じゃないじゃん…ん、なんかマイクの調子が悪いみたい。もうマイクを隠す素振りすら見せないよ、バレバレ。あ、なんかお隣さんの家からスーツ姿の男が何人か出てきてマイクの位置を直したり、『マイクをあまりさわらないでください』とか言ってる」
「ニィィィィィ!!!マヌケめ!!キミカちゃん、家の中には何人ぐらい軍とか警察の奴がいるかわかりますかォ?」
「えーっと、どうするんだっけ」
ケイスケは俺の頭をがっしり掴んで向かいご近所様の家に向けて、
「家の中が見たいと念じれば透けますにぃ!」
「ふむふむ」
俺は頭の中で向かい側の家の中が見たいと願った…すると、家の壁が透明になり、中に数名のスーツ姿の奴らが機材を構えて座っているのが見える。時代設定100年前の逆探知してる警察の姿そのまんまだ。
「5人はいるね…」
さらに奥の方へ奥の方へと透視していく…と、
「ん…んんッ?!」
「な、何があったんですかォ?」
「これはまた…」
「ぐ、軍と警察以外に何があるんですかォ?」
「これは…Dかな」
「D?!なんですか?Dって、そういうドロイドがいるんですかぉ?」
「Dカップぐらい…お隣の家ってお嬢さんが住んでるんだね」
「おいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!見せてくださいですぉォォァァァ!!!録画モードで録画できるから、録画して後でデータディスクに書き込んでくださいィォァァ!!」
「自分で透視のメガネみたいなのを準備すればいいじゃん」
「それはキミカちゃんの能力だから道具にはできないんですぉ…」
「ふーん」
と、言いながら俺はジッとお隣のお嬢さんのイヤラシイお風呂のシーンを見つめていた。
「と、とにかくですぉ。家に帰るのは今日は無理だから、ホテルに泊まりますにゃん…フヒヒ…」
「えーっと…別の部屋だよね」
「一緒の部屋に決まってるじゃないですかォォァァ!!」
「何でだよ!!!」
「一緒に部屋にしないと、もし軍か警察の連中が部屋に突入してきたら、ボクちんを助けてくれるキミカちゃんが側に居ないから大変なことになってしまいますぉぉぉぉ!!!」
「それはあるけど警察が突入してきたら未成年と一緒の部屋に寝てた罪で簡単に逮捕されてしまう…」
「そこはキミカちゃんが暴れてくれればいいですにゃん」
「…」
ドリフのエンドじゃないんだからドンちゃん騒ぎで何もかも次から無かったことになるわけがないのに。
まぁ、そんな事を考えながらもケイスケと俺は、厳戒態勢でケイスケ宅の周囲を張り込んでいる連中を後にしてホテルへと向かった。
そして、小一時間後。
都内ホテル。
「おい」
俺はさっそく目の前のタッチパネルで部屋を選んでいるデブにそう言った。何故ならデブはニヘラニヘラと笑いながら部屋を選んでいるし、選んでいる部屋は休憩もできるタイプの部屋なわけで、俺の背後にはアンドロイドの娼婦を連れた男性がよそよそしくも廊下を行き交っているわけで、つまり、ここはラブホテルなわけである。
「そんな怖い声を出さないで欲しいにゃん」
「ホテルなら他にも色々あるじゃん」
「無いです」
「あ?」
「他のホテルは満室だったんですにぃ…」
「本当にそうなのかあたしが今かr」
「ダァァァンメッ!!!ダメですぉ!!!」
素早い操作でタッチパネルをポチポチ押すと、ケイスケはあっという間にスイートを確保して俺をお姫様抱っこ状態で抱えてエレベータに乗った。そしてあっという間にスイート・ルームへと突入した。
随分と広い。
部屋の中心には巨大な回転ベッドがあり、壁側には何の目的であるのか不明なクローゼットあり、液晶テレビが壁に掛けてあり…20畳は軽くあるだろうか、無駄に広い。
「シャワーは、先に浴びてきなよ…」
突然、普段のにゃん語ではなく渋い声を出すデブ。
「んじゃ、お先に失礼」
普通は男性が風呂は先に入るものだけれども、まぁ先にひとっ風呂浴びてきていいんだっていうんだから失礼させてもらおう。
洗面所。広い。6畳ぐらいか。
服を脱ぐだけなのに鏡が全身を映せるようにそこにある。
大きな鏡の前には女子高生の美少女の姿…つまり、俺の姿があった。しかし普段、生活感のある家のような空間とは違う。ここはラブホテルなのだ。ラブホテルに女子高生がいる…というシチュエーションだけで俺は興奮してきてしまった。鏡にうつる美少女が俺自身であると思っていながら興奮してきた。おかしいのだろうか、いや、おかしくない。
タイに手を掛けてゆっくりと外す。
ブラウスのボタンを1つ、2つ…と外すと、白い胸元が顕になる。
「ゴクリ」
自分の姿を見て興奮してしまうとは、これもこのラブホテルという特殊空間のなせる技なのだろうか…しかも、顔が高揚しているらしく、恥ずかしそうに服を脱ぐ美少女が鏡に映っている。俺だった。
ブラウスを脱ぎスカートを脱ぐ。
そしてブラに手をかける。
今まで普通にぽいぽい脱いでたけれど、こうやってジラすようにゆっくり脱ぐとまた興奮してくるなぁ…おいおいおいおい、自分の姿を見て興奮するなんてなんてナルシストなんだ。
でも、ブラとパンツを脱いだら…うーん、生まれたままの姿のあまりエロくないこと。これはチラリズムに繋がるものがあるのかな、もう肉体標本を見ているような…確かにスタイルは良いんだけれど、もっと色っぽい見せ方が欲しいよなぁ、と思いながら興ざめしてお風呂のほうへと足を運んだ。
シャワールームは…というと、これは普通か。
お風呂の前にシャワーを浴びましょう。
身体を洗い流して髪も洗う。普段そうしているようにシャンプーとリンスを手の上でグシャグシャに混ぜてから髪にオラオラオラと塗りたくってワシワシと洗う。普通の女性が見たら驚くような手荒い洗い方である。で、そのシャンプーとリンスがついてる泡をそのまんま身体にも塗りたくって洗いまくる。
はい、おしまい。
男のシャワーなんてのはこんな単純なものなわけだよ、しかし、身体が男に比べて凸凹している女は、おっぱいとアレが洗いづらいんだよな。
さてさて、いよいよお風呂のご登場である。
ん…暗いな。
階段があって、風呂桶なる部分はその階段を登った頂上にある。で、上からは手術台のようにきらびやかな証明がお風呂を照らしている。お風呂は男性と女性が2人入ってもまだあと2人入れるぐらいの大きなもの。
「ってぇ…ことはァ…ここって、男女4名が入ってアレやコレをしたりするのかな…なんちって」とアニメ声で語りながらも、美少女である俺はゆっくりと風呂桶の階段をのぼる。
その姿も鏡張りの部屋の中に映しだされているわけだ。
贅沢な造りだなぁ…。
石鹸の泡なのだろうか、風呂桶の中から空中に向かって大量の泡、しゃぼんだま、水泡が湧き上がっている。すると、突然、部屋の照明が暗くなって風呂のお湯の底だけが光る。
幻想的なシチュエーションだ。
「よっこらセックス」
俺はその風呂の中に腰を降ろした。
ほほぉ、最新の風呂は肌触りが固くなくて、まるでアンドロイドの肌を触っているかのようなプニプニとして触り心地なわけか、で、背中をそれに任せると、背中にもプニプニとした肉の感触が。
「…って、何やってんじゃァァァァーッい!!!」
おもいっきり俺の背後にはケイスケの糞デブの肉塊がある。
俺は素早くその肉塊から離れて大事なところと胸を隠して立ち上がった。相手が男であっても、なんか見せてはならないような気がして。
「い、いやぁ、いい風呂ですにぃ…」
顔を真赤にして俺を見てからケイスケが言う。
「風呂は交代で入るものでしょうが!!」
「キミカちゃんは先にシャワーを、ボクちんは先にお風呂を味わっているという段取りでしたが、キミカちゃんがボクちんを椅子代わりに座るので股間ジョイスティックがさっきから天を刺しております」
「いいから出てってよ!!!!!このままケイスケが風呂桶に居たら中が豚骨風味になるじゃんか!!」
「ボクちんはラーメンの出汁じゃないですォォ!!!」
突然、部屋の照明が完全に落ちる。
真っ暗闇だ。
「ちょっ、これはどういう演出なの?!」
「フヒヒ、キミカちゃぁぁーん」
「おい!!抱きつくな!!殺すぞ!!!」
突然風呂のの照明が明るくなる…しかも、さっきのライトアップされたものとは違う、完全に風呂をメンテナンスする時の照明である。
「げ」
「ハァハァ…」
俺の身体にまとわりつくデブ、その周囲を武装した軍の兵とドロイドが包囲していた…。もう完全に照準をロックオンされた状態で。