159 反日デモ 7

お風呂前。
風の音よりも小さな音で俺は脱衣所へと侵入する。
足音はグラビティコントロールによって確実に消し去って、後は空気が俺の身体に当たる音なわけだが、それについても繊細な神経により察知して、『空気が身体に当たる音』をも消し去る。
それが究極にして最強の至高の『覗き』。
脱衣所からもシャワーを浴びている音が聞こえる…グヒヒ。
俺は脱衣所に備え付けてあるカゴの中の洋服をグヒグヒ言いながら弄っていた。んだけどォ…。
ん?
タエが着ていた服…が、カゴの中にあるはずなんだけど…?
全然違う、学生服みたいなのがある。
もちろん俺が通っている学校のとは違う。
あれぇ?
おっかしいなぁ…タエはセクシーな下着を着ていたはずなんだけどォ?なんだこれェ?ピンクの可愛らしい、まるで俺が着てるような、いや、ごめん、俺が『ケイスケに無理やり着させられてる』ような、可愛らしい下着があるなじゃないか。
待てよ。
待て待て。
俺はシャワールームへと侵入しようとする俺自身の欲求に全面から立ち向かっていた。そのまま入っていいのか?と。
もちろん、法律や倫理の観点からすると完全に違法だし、入っちゃダメだし、どんな反撃を喰らうかわからない、つまり、生命維持の観点からしてもこれは危険行為なわけだけれど、そもそも、シャワーを浴びているのはタエなのか?という疑問が沸き起こるわけだ。
でも、この時間でファリンの家族もファリンも寝ているからなぁ、さっきシャワー浴びて来ると言って出て行ったタエ以外がシャワーを浴びている可能性がちょっと低いんじゃないか?
ま、いいか。
俺は自分自身が男だという前提だから、風呂に誰か女の子が入っていて一緒に入るのをスケベだと勝手に勘違いしているんだよ。女の子同士でお風呂に入るなんて日常茶飯事だし、そのままイヤラシイ事をする流れになるのも日常茶飯事なのだ。
あ、ごめんごめん、入ってたの?
って言えばいいのさ。
服をヌギヌギしながらそんな事を考えて、ちょっとドキドキしながらシャワー室のドアをズイと押して開けた。
「へ?」
シャワー室を開けると、そこには美少女がいた。
髪はシャンプーによる泡を流し落とそうとするところで、クリーム色をしてストレートで肩よりも長い。そして泡が方からおっぱいにかかって辛うじて乳首を隠すように…けれども重力で下へ下へと落ちるとピンクの乳首がこんにちわしている。濡れてピカピカに光るようなスベスベの白い肌…そして白い胸の谷間、細く引き締まっている腰。
タエじゃない。
…って、誰?!
その美少女は慌てて自らのおっぱいを腕で隠そうとする。が、それが胸の柔らかさを証明するようにムニュとおっぱいを押し上げる。
顔を真っ赤にしてからその美少女は、
「お…」
「お?」
「おま…おま…」
「おまんこ?」
「オマエーッ!!!何覗いてんだコラーッ!!!」
な、なんでこの美少女、タエと同じ声なんだよ、おいい…。
っていうか、タエかよ!!なんで顔違うんだよ!!
「えっと、どなたですか?」
俺は真顔でそう聞いていた。
「あたしだよ!タエだよ!!変身前だよコノヤロウ!!」
顔真っ赤にして叫ぶ美少女…いや、変身前のタエ。
っていうか、今までドロイドバスター変身状態だったのね、あぁ、そうか、そうだよね、変身前であの強さはないよね〜…。
「なーんだ。タエかぁ、どこの美少女かと思ったよ」
「っつぅか、なんでテメェ、あたしのパンツ握ってんだこの野郎!」
「あれ?これ?あら、いつの間に、ハハハ、こやつめ」
「こやつめ…じゃねぇぇぇょぉぉぉおぉぉ!!オマエだよ、オマエ!!人の下着あさってんじゃねぇぇぇぇよぉぉぉぉ!!!」
すると、タエは俺の持っているパンティーを奪い取ろうと、いや、俺が勝手にタエのパンティーを持っていたわけで、それを奪い返そうと、俺に襲い掛かってくるではないか。
「え、ちょっ、何マジになっt」
と俺が言ったその時、勢いで俺を押し倒すようにタエが重なるのだ。
全裸で。
(ドシーン)
なんてありがちな展開なんだ、嬉しいですね、はい。
お風呂に入ろうとしていた全裸の変身後の美少女の俺の身体の上には、同じく全裸で美少女の変身前のタエ温かい湿った身体が泡と共にピッタリとくっついて、おっぱいなんてお互いの大きさを主張しあうようにおしくら饅頭をしている。
「い…てて、」
「ああぁ…暖かい」
俺のスベスベの美少女の腕が濡れたタエの頭を抱き、包み込む。
「」
俺と目が合うタエ。
そのまま顔を真っ赤にするタエ。
「は、離れろこの野郎!!!」
空間が歪んだかと思うと俺の背後からあの処刑人の女アンドロイドが抱きしめ…じゃなくて、羽交い締めしてくるではないか。
そのままタエはシャワー室の扉をバシンと締めた。
俺とアンドロイドは無言のまま、脱衣所に残された…。
「なにこれ、あたし、全裸で待機しなきゃいけないの?」
「いま、シャワーで泡を落としてるから待ってろこの野郎!!」
アンドロイドがそう怒鳴る。
再び空間がねじ曲がると俺の目の前には処刑人の男のアンドロイドうち一体が現れて、タエの下着とタオルを持ってシャワー室の中にそれらを突っ込んでいった。
ものの5分ほどで下着姿のタエ(変身前)が髪を拭きながら現れる。
「ったく、女の子同士なのにどうしてそんなに恥ずかしがるんだか」
と俺が言うと、
「オマエはレズビアンだろうが!!」
そうタエは叫ぶ。
「っていうかアンタがお風呂がなすぎるから来たんだよ!何時間入ってんだよ馬鹿!」
「あたしは変身前と変身後の2回シャワー浴びないと気が済まないんだよ!!あんたみたいに不潔じゃないの!!」
「ン…だとゥゥゥ!?」
しかし、そういう考えは無かったな…確かに俺もなんとなく、そうじゃなきゃいけない気がしてきた。変身前と変身後でそれぞれちゃんと洗わないと…っていう気持ちに。
そういえばケイスケが長時間ドロイドバスターのままの状態はよろしくないって言ってたし、ここいらで元に戻るか。
俺は変身を解除した。
つまり、タエの目の前には変身前の俺の姿が現れる。
「…なんか、全然印象違うんだな」
「え?そう?」
「というか…変身後はカッコイイのに、変身前はなんで男に媚びるような顔になってんの?」
「うるさいよ」