158 重慶の春 9

右に襲いかかってきた猿は十字斬りでサイコロステーキにしてあげて、左に襲いかかってきた猿は上下斬りで3枚におろしてあげた。
そして隙を見て襲い掛かってくる上からの猿の攻撃はイナバウワーよろしく背後に背中を大きく反らしてかわす。そして、セカンダリの振り回したグングニルの槍によって野球のボールよろしくビルの上まで吹き飛ばされた。猿とグングニルの槍がぶちあたる瞬間には衝撃波が確実に猿の骨と肉をグチャグチャに破壊していった。
そして、一斉に襲い掛かってくる猿達には、今しがたセッティングしていた俺とセカンダリの仕掛けた超多段式キミカインパクトによる怒涛の重力波攻撃が発動。俺とセカンダリを中心にしてビルとビルの谷間にクレーターがいくつも出来る…。
凄い、凄いぞ、このパワー!!
敗北を知りたい…。
ゲームにしたらゴッドモード一歩手前のウルトラチート状態でゲームマスター呼ばれてアカウント剥奪させられるレベルだ。
「ゲームで同時にキャラを操れる以外には何の使い道もない」と俺の彼女(キリカ)に言われた時なんて、マジで押し倒して股の間に脚を突っ込んでオシッコチビるまで超振動電気アンマ食らわせてやろうかと思ったぐらいにムカついて諦めてたけれど、まさかこんな使い方があるなんてな!!アンドロイド以外でもタチコマフチコマの制御を一時的に俺がやればドロイドバスターの能力を発揮できるぞ!
孫悟空野郎が俺の足元に滑りこんでくる。
その時、奴が印を結んでいたのを確認した。
どんな技を使うのか興味があったけれども、あまりにも至近距離過ぎるから俺は奴の身体ごとグラビティコントロールで地面を盛り上げて、10メートルぐらい押し上げた。
案の定、空高く炎の塊が吹き出る。
ジライヤと同じ能力だ。エントロピーコントロールも使いこなせている…この猿も意外とやるな。いや…まてよ。俺がセカンダリと一緒にドロイドバスターの能力が使えているってことはァ…。
「やばィ!!」
クソッ!!
今しがた、ようやく俺はこの孫悟空どもが多くの犠牲を払いながらも、俺とセカンダリとの距離を縮めてきていた理由がわかった。こいつ等、一斉に包囲してさっきの火遁の術みたいなのを食らわせるつもりだ。
間に合え…!
間に合え間に合え!!
俺とセカンダリは互いの背中を合わせながら、その僅かな時間を利用してブラックホールディフレクターを手のひらに展開していた。
印を結ぶ猿。
術の発動。
セカンダリと俺の創りだしたブラックホールは合計4個。それぞれがそれぞれの向きに対して炎を吸収するようにブラックホールを突き出したが、横方向からの攻撃には無力だった。
バリアが削ぎ落とされるのがわかった。
『派手にキメてよ!!』
『おうよ!!』
電脳通信でフチコマに連絡。そして、
「口寄せの術!」
俺とセカンダリを囲むようにムカデの巨体が現れ、炎を遮ると同時に高出力ビームが周囲360度をグルリと薙ぎ払う。バターに超高温のナイフが通ったように孫悟空どもはビームによって身体が切断され、切断面からは血ではなく炎が吹き上がった。
周囲は炎に包まれて肉の焼ける美味しそうな匂いが立ち込める。
猿のバーベキューだ!
「封印!!」
再びフチコマを封印。異次元にギュルギュルと吸い込まれていくフチコマ。と、その時、漆黒の棒のようなものがフチコマが居なくなった空間にニュっと伸びてk…
「げぇッ!」
鳩尾狙いの如意棒攻撃が本体である俺の鳩尾に見事に入り、そのままビルの上までどんどん押し上げていく。が、ビルに叩きつけられる寸前でかわして、如意棒に掴まる。
キミカ部屋からレールガンを取り出し、セカンダリの周囲にいる猿どもをミンチに変えていく。ほらほら!さっさと復活させないと全部ミンチになって復活も出来なくなるぞ!!
「んんんッ?!」
これだけ遠くに離れてみて始めてわかった…なんか、調子こいて暴れていたタエが操作している処刑人アンドロイドどもが猿まみれになって既にサルに同化してサルを生産してんだけど!!
中でもガタイのいい巨漢アンドロイドなんて頭の部分が猿になって身体が人間のままで20頭身になってる。それだけならまだ笑えるけれど、セカンダリにも攻撃仕掛けようとしてるじゃねぇか。
再び如意棒が重力波を発せようとしたのを検知した俺は、そこから飛んで離れる。案の定、如意棒は凄まじい音を立てて地面に激突。縦50メートルぐらいにわたって亀裂が入る。
『何やってんの!乗っ取られてるよ!!』
『うっせぇバーカ!!強すぎなんだよ!!』
『早く回収しなよ!』
『今、クソボロのチャイナトラックのエンジンが掛かったから駐車場からでる!それまでに猿を何とかしてくんね?』
爆発しなけりゃいいが…。
猿に身体を乗っ取られたタエのアンドロイドが腕に装着されたミニガンセカンダリに向ける。
俺はキミカ部屋にブレードを収納。セカンダリは持っていたグングニルを収納。つまりキミカ部屋経由で武器を交換した。
ミニガンの銃撃をブレードで弾き飛ばすセカンダリ。弾き飛ばしながら近づいて処刑人アンドロイドも猿もミンチに変える。
と、同時に周囲に黒い波動が現れる…グラビティコントロールによるジャンプだ。一瞬、周囲の埃や石が宙に浮かんだのち、セカンダリは空高く弾丸ロケットのように飛び上がった。
俺が投げたグングニルの槍が地面に命中し「喝ッ!」という叫びと共に周囲を吹き飛ばしたのはその後だった。