155 デス・ノート・オブ・ネクロノミカン 9

男性化するであろう雰囲気…っていうのがあるのか知らないけれども、俺のドロイドバスターとしての特殊な気配察知能力がそれらを感じ取っている。
ピリピリとした空気が温水プール建屋から響いてくるのだ。
さっさとあの腐女子2名からネクロノミカンを取り返さなければ。マジでえぇかげんにせぇよ?って感じだよ、人の身体を弄びやがって…!!
さて、玄関から侵入し素早く廊下を移動する。
女子更衣室の扉の前。
…ドロイドバスターで男性化するケースは後はマコトぐらいしか残っていない。もちろん、キサラや俺の彼女も男性化の対象になりうるわけではあるけれど、俺の予測、奴等の男性バージョンを描いたとしてもネクロノミカンはそれを現実化しないと思われるのだ。
何故かって?
中身が女の子のキサラとキリカは、男性化バージョンに一致する人間が居ないからだよ!!
つまり、更衣室にマコトが居なければ邪魔が入らずに奴等を…。
ゆっくりと女子更衣室の奥へと歩いていく俺。もう時間的には部活動の最中となっているから、今の時間で更衣室にいる女子は居ない…。
はず…なんだけど…。
「マコト何してんだよォォォォ!!!」
「ビクッ!!」
マコトが俺のロッカーの前で俺の水着を着ようとしてるゥゥゥ!!!
「今ヤバイんだってば!!」
「ななななな、何もしてないョ?」
「もうバレバレじゃん!あたしの水着着ようとしてるのはもう別にいいから!とにかく更衣室から出て行って!遠くに逃げて!ヤバイんだってば!」
「えぇ?!え?!何がどうなってるの?!…もしかして、スタンドの攻撃を、」
「いいから!早く逃げて!」
「ふっ…好きな女の子を前にして、敵から逃げ出すなんて、それはボクに死ねって言ってることだと同じだよ…逃げるのはキミカちゃんのほうだよ。ボクが戦う!!」
「いやだからマコトが今からあたしの敵になるんだよ!!」
「えぇぇぇえ!?意味がわかんないよォ…」
と、マコトは俺の水着をロッカーに仕舞って、脱ぎかけていた服を正しながら、ニコニコしながら俺の元へと歩み寄ってくる…最初っから説明しないとヤバイ事がわかんないか!
「えっと、キリカがね、」
と、その時だった。
もう今日で3度目になるであろう、黄昏色の空間へと切り替わる。パラパラと周囲の壁、地面、天井、ロッカー、それらの表面が剥がれて中から黄昏色へと変化していく。明らかに、現実の空間にネクロノミカンによる干渉が起きている。
…。
「俺のロッカーの前で何をしてるんだ?マコト」
と、渋い男の声で言い放ったのは…言うまでもなく、男バージョンの俺だった。
「え、あの、その、ボクは…」
え、ちょっ、女バージョンのマコトと大差がないぞ…?
っていうか、そういうキャラとして腐女子どもはマコトを男性化したってことか?!
華奢な身体でまるで男の娘が男子制服を着ているかのように、肩を強張らせてオドオドとしてるマコト。というよりもそもそも女子更衣室の中で何をやってんだよ俺とマコトは、っていうアレですよ。マジで警察呼ばれたらアウトだからコレ。
男モードの俺は俺の意思に反し、ネクロノミカンに記述されたストーリーを淡々と実行していく。次はスタスタと自らのロッカーの前に歩いていくと、マコトが弄っていた水着を、その男性用水着を、手に取ってから「ふんっ」と一言。
(バンッ)
強くロッカーを閉める俺…あれぇ?そういうキャラなの?なんか今の音でマコトが身体をビクつかせたんだけど?俺、怖いキャラなの?
「そういう事か…」
そう冷たく言い放つ俺。
「違っ…」
「違わないだろ?何をしてたんだマコト…俺の水着で」
ですよね〜。
俺はマコトに歩み寄って、ズイズイと男の娘のようなマコトをロッカーを背にするよう追い詰めていく。身長が俺のほうが高いからか俺の視界の下に居る。オドオドとした小動物が肉食獣を前にして追い詰められていくようなそんな気分だ…。
(ダンッ)
また始まったよ…。
腐女子は男を追い詰めて壁の前で腕を突き出すのが好きなのか?
「ヒッ!」
「何をしていたんだ?…そして…何を『されたい』んだ?」
あわわわわわわわわ…。
俺の腕がマコトの男子制服の上にあり、それは乱暴にボタンを外して男なのにやたらとスベスベとした綺麗な肌を露出させていく…。
「嫌、違っ、ボク、こんなことキミカとしたいんじゃないっ…」
「そうか?身体は正直だぞ?」
んん?!
今、何か空気が変わったぞ?!
よくわかんないけど、何かが違う…?!
俺の腕はマコトの股間の間へと差し込まれる。キン◯マ、竿でも触るんだと思っていたんだけれど、「ん?」という表情になる俺。
「な、無い…?!」
え?
無いよ?!
無い!!
キン◯マも竿も無い!!
え?!
どういうこと?
腐女子どうしちゃったの?!
「ご、ごめんなさい…ボク、今まで、自分が女の子であること、黙ってたんだ…」
ってボーイッシュな美少女なマコトが言ってる。あれれぇ?!
「やっぱり…というべきか。もう気づいていたさ…」
そうなのォ?!
「こんなボク…でも…食べてくれますか?」
震える声で泣きそうな顔で言うマコト。
男子制服の間から自己主張する小さな膨らみ…おっぱいがめちゃくちゃ小さな女の子が男子制服を着ているというシチュエーションそのまんま…である。
「もちろんだよ」
もちろんだよ!
いただきマンモス♪
女性化しているのならもう恐れる必要はない!!俺はその華奢な身体を、か細い腰を掴んで自らの身体に引き寄せた。もうネクロノミカンのストーリーと俺の意思とが完全に一致してるんで、全然違和感がない。どうなってんのよ?!本当に腐女子が描いてるのか?!
「んちゅ…くちゅ…」
男と、女の子の濃厚なキスシーンが続く。俺の背中には細い白い腕が回され、俺は俺でワイシャツを脱がして小さな膨らみに手を添えてモミモミしてるゥ!いいよねいいよねぇ!
このまま本番へと突入しちゃぅ?!
コンドームとかもしなくていいよね?!
「は、初めてだから…やさしくして…ね」
と可愛らしい胸板美少女のマコトがズボンを脱いでスポーツ系パンティーを脱いだ。
ウヒヒヒヒッ!!
と、その時だった…。
ネクロノミカンの影響が解除されていくのが分かる…周囲の黄昏色だった景色が再び剥がれていく。中から現実の景色が戻ってくるゥゥゥ!!いいところだったのに!!
目の前のマコトは美少女でペチャパイのまま、男性制服が女子制服に変わるっていうだけの変化をする…で、俺は男モードから女モードへと変わっている。
「げぇぇぇぇぇぇぇええぇ!!!」
と叫んで嘔吐の仕草をするのはマコトだ。
「だから逃げろってあれほど言ったのに…」
まぁ、俺にしてみれば好物ですけど!
「男におっぱい揉まれて男にキスされたよォォォォォ!!!」
脱ぎかけの制服を正しながらマコトは叫ぶ。
その時、俺のaiPhoneがヴーンとバイブ音を出す。
手に取るとキリカから電話が掛かってきてる。
『どしたの?なんか雰囲気が変わって、マコトが女っていうオチになったんだけど?』
『うん。キミカファンクラブの団員さん達が腐女子に奪われたネクロノミカンの奪還に成功したの。それで、途中でネームを描き変えて、マコトさんを女っていうオチにしたの』
『ほほぅ!ナイスアイデア!!そのままセックスまでさせてくれればいいのに!』
『う、うん…まぁ、続きを今、描いてるらしいんだけど…』
『キミカファンクラブの絵師さんが描いてるのかな?』
『えっと、担任の先生が絵がうまくて、新しいストーリーを描いてる…けど、止めさせたほうがいいのかな?』
えぇ?!
描いてるのケイスケか?!
『え、ちょっ、ヤバイって!ヤバイ予感がビリビリするってば!何描いてるの?!』
『…言葉で説明するのは難しいから、私の能力でキミカの視覚野へ飛ばす』
俺の視覚野へと飛ばされてくるのはキリカが今しがた見た『新作』の絵…。あのマコトと唇を重ねたシーンから、
「実は俺も女の子だったんだ…」
って男の俺が言い出す…。服を脱ぎ始める俺。
「キミカさん…」
驚くマコト。
女子更衣室に2名、女子がいる。
おいおいおい!!展開が無理すぎじゃんか?!
と、そこへ現れる水泳部顧問…のケイスケぇぇぇ?!
「フヒヒ…見させてもらったニャン!!二人共、実は女の子だっただなんてぇ…ボクチン衝撃!衝撃しすぎて、股間がこんなんなったったァ」と見せる巨根。
おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!!!
ヤバイ!ヤバイって!!薄い本みたいな展開じゃん!
「うわー!!何してんだよ!」
「フヒヒヒ!!キミカちゃんの肉壷でボクチンの巨根を愛してニャン!」
「ぎゃー!!」
(ジュポ…ブッ!)
「ンホォォォォォォ!!!」
「キミカちゃんの処女膜いただきマンモス♪」
やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
『あ』
『ど、どしたの?!止めさせた?!』
『いま、職員室にメイリンとコーネリアが入ってきて、先生をリンチしてる…あ、今、メイリンがネクロノミカンを手に持って電撃加えて、塵に変えた…』
…た、助かった。
電話の向こうからはケイスケの悲鳴が聞こえていた。
おそらく、キミカファンクラブの団員から聞いた事を変に勘違いして、ケイスケがネクロノミカンを使って変なストーリーを描いたと勘違いしたんだろう…でも、二人の馬鹿度もこういう時には役にたってくれて…俺は嬉しい。