155 デス・ノート・オブ・ネクロノミカン 3

結局、俺とキリカは思い出の品らしきものは写真ぐらいしか見つけることが出来ず、それらをバッグの中に収めてから家を出たのだ。
キリカの力で俺を男にして、部屋でセックスしてから家を出ようと提案するも、
「あのおばさんが一階で作業してるからギシアンしてたら1階に響いてしまう…キミカの彼女がキミカのフィアンセとセックスしている状況を万が一見られたりしたら、それこそ一生のトラウマを植え付けてしまう可能性がある…」
とか真顔で言うから止めておいた。
「それでキリカは何をしにあの家に行ったんだよォ…」
「私もキミカとの思い出を探しに…」
「で、何か見つかったの?」
「とりあえず、キミカがスクール水着フェチでどっちかというと貧乳好きな事実を見つけた」とか言いながら俺が探してたエロ本がキリカのバッグの中から取り出す。
…。
ってお前が取ったんかぃいぃぃぃ!!!
「人のエロ本返せよぉォォォラァァァァァァアアァァ!!!」
俺は力づくでそのエロ本を取り返そうとキリカのバッグを揺さぶる。
「やめてよぉ〜!バッグが、バッグが壊れるゥ…あっ」
キリカのバッグがバスの床に落ちてエロ本が散らばった!!
っていうか、バスに乗ってたのを忘れてた。
「はわゎゎゎわわ!!」
「ひぃーッ!」
一斉に周囲の目が俺達に集中する。いや、俺達が散らかしたエロ本に。あたふたとしている俺達に。そしてエロ本の内容がスクール水着専門ということに、集中する。
俺は自分の持ってるエロ本が、自分の趣味が一般公開されたことで顔が沸点を超えた鉄のように真っ赤になっているだろう…湯気がでる勢いだ。
俺もキリカもあたふたと慌ててバッグの中へエロ本を格納した。っていうかキミカ部屋に吸い込めばよかったな、今更ながら。
「キミカは心配しなくていい。私がスクール水着を着てあげるから…」
「お!そいつは楽しみですねぇ…(ゲス顔」
「デカ胸好きなはずなのに何故か持ってるエロ本が貧乳…私、少しだけ自信がついてきてる…貧乳はステータス」と顔を赤らめて言うキリカ。
「なんかねぇ、あれだよ、あれ。ロリコンっていうか、ロリコン魂が揺さぶられるんだよね。小学校中学校と女子のスクール水着を経験してるからさー、高校になってデカチチのスクール水着見てもあんまりピンとこないんだよね〜」
「ロリ…コン…」
「え?なんか変なこと言ったっけ?」
あれぇ?俺、何か変かぁ?
「私とキミカ、同い年…」
「同い年でも背がちっちゃいし、胸もちっちゃいし、そこが可愛いんじゃないか。ほらロリコンはステータスだ!って言うじゃん?」
「…」
ジト目でキリカに睨まれたよ…。
途中でキリカは自宅マンション付近で降りる。
降りる間際に「じゃあ、私、研究するから!」とか言ってるし、俺は俺でそれに向かって「旧スクール水着っていう分野で、パンツと水着が分離してるようなのがいいから!それが一番エッチだから!」と興奮して鼻息を荒くして答えたり、それに向かってキリカも「うん、わかった!」とか鼻息荒くして返したりなど…。
彼女が降りてからのバス内の俺への視線に痛みを感じながら、俺は家、つまりケイスケ宅へと戻った。
げ。
既にケイスケもマコトもナツコも帰宅してるじゃん…どんだけ俺とキリカはウロウロしてたんだ…途中で買い物とかしたりホテル前で入ろうかそれとも入らないかモメたりしてたからなぁ…クッソぉ…きっと俺が今日一日どこで何をやっていたのか質問攻めだ。
と、俺は玄関の靴の数を見て考えてた。
考えててもしょうがない。
「ただいまぁ」
と言いながらリビングへと入場。
「キミカちゃん!」
まずマコトがあのボーイッシュなショートカットな髪を靡かせて腕を組んで仁王立ち。
「は、はい…」
「今日、どこで何をしていたの!!誰と会ってたの!!」
とか言い出すのだ。
「えっと…自宅へ」
「じ、自宅ゥゥ?!」
ここでケイスケもナツコもカンがいいのか気づいたようだ。
「キミカちゃんの自宅で何をしてたんですかぉ?」
「あたしの元住んでいた家が売りに出されるって話を、某知人から聞いてそれで思い出の品を取りに行ったんだよ…ま、写真ぐらいしか持って帰れなかったけどね」
そう言って俺はバッグから写真を取り出して並べた。
興味津々で見てるのはナツコとにぃぁだ。にぃぁなんて匂いをクンカクンカと嗅いでいたりもするのだ。しかしケイスケはまるで糞でも見るかのような目で俺の家族の写真を見ている。
「ちょっ、その目やめてくんないかな…」
俺が睨むと、
「お、男の頃のキミカちゃんの写真なんて見たくないにゃん!」
とか言い出す。
そのケイスケの発言の後、マコトは一人、「え?え?」と困惑しているのだ。俺の家族の写真を見たりしてから、「キミカちゃんはどこにいるの?」とか言ってるし。
ん?
マコトって俺が中身女の子じゃなくて男の子だってこと、知らないのか?!
ナツコは目をパチクリさせながら俺の、俺や家族の映っている写真を見ている。少し頬も赤らめて。
それを見て兄であるケイスケは言う。
「どこに押しピンを挿してやろうかァ…(白目」
おい。
「やめてよね、思い出の品なんだから」
「げ!意外とイケメンですにゃん!!うわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!クッソムカついてきたニィィィィ…イケメン爆発しろォォォ!!!」
そういえばケイスケはもちろん俺が中身は男だって知ってるけど、どういう顔だったのかは知らなかったのか。俺の本当の顔を知ってる人は彼女であるキリカだけだった。
「ちょっ、おにぃさま!やめてくださいまし!」
写真に脂っこい手で触ろうとしていたケイスケの手を払いのけるナツコ。
「な、何をするんですかぉ!!」
「キミカさんの思い出の品なんですから!」
って、俺の本当の顔知ってから態度変わってるよおい!!
「あ、どうも…ありがと」
と俺がナツコに言うと、ぽっと顔を赤らめて、
「ど、どういたしましてですわ…」
ウヒィィィ!!!
わかりやすいよォォ…今まで俺の事をぞんざいに扱ってたくせに!っていうかケイスケと俺とがほぼ同じジャンルの男として扱ってたくせに!本当の俺の顔を知ってからの豹変っぷりハンパねぇ…やべぇ…マジ、女やべぇよ…男のレベルじゃないぐらいの面食いやべぇ…。
そんな中、一人だけ俺の写真を見てかなり驚いてる人が…。
「うそ…だ…嘘だと言ってよキミカちゃぁぁぁぁーん!!」
ウヒィィィ!!!
マコトに言った事なかたっけぇ?!
今までずっと俺の事を女だと思ってたのかよォ…。
と、とりあえず動揺するマコトを落ち着かせないと。
「嘘…だっぴょぉッ…ゥフッ!」
(ゴッ)
左からはナツコのストレートパンチが、右からはケイスケの空手チョップが、背後からはにぃぁのドロップキックが俺に襲いかかってきた!
っていうかにぃぁがなんで蹴ってんねん!
「っていうかマコト知ってたんだと思ったよ」
頭をポリポリ掻きながら俺は言う。
「知らなかったよ…まさかキミカちゃんも、僕とおんなじ、死ぬ前までは男の子だなんて…!!た、確かになんか豪気なところとか、クールなところとか、合理的な思考回路だとか…あと、やたらと女の子に対してエッチなところとか、思い当たるフシはありすぎるぐらいにあるよ!!!うわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」
そのままマコトは倒れて失神した。
「「「…」」」
10秒ぐらい経過してから、
「きゅ、救急車呼んだほうがいいかな?」
と俺が言い出すと、ムクリとマコトは起き上がってから言う。
「でも…ボク…それでも構わないよ…」
「「「えぇ?!」」」
俺とケイスケとナツコが同時に驚く。
目ン玉飛び出るかっていうぐらいに驚く。
「だって、キミカちゃんのそういうところも、ボク、好きなんだから…」
「マコト…」
「ボク、キミカちゃんっていう女の子が好きなんじゃなくて、キミカちゃんっていう『人』が好きなんだよ。性別はあとからついてまわるだけで…もし、男の時に出会ってたら、いい友達になれたと思う」
そう言ってマコトははにかんで見せた。
「ま、マコトォ…」
俺は少し感動してウルウルしてると、
「キミカちゃーぁぁぁぁん!」
マコトは俺に飛びかかってきて、そのまま抱きしめてきた。
「よしよし、いい子だね」
「フヒヒ」
「いま、マコトさんがキミカさんに抱きしめられながらも、ゲス顔で笑っているのが見えましたわ…。きっと普段はクールな性格なのに、時折見せる『全てを包み込んでくれるような母性』が好きなのでは…」
などと勝手に解説する。が、まぁそれは俺にはどうでもいいことだ。このショートカットのボーイッシュな美少女が俺に抱きついているという現実に比べたら些細な事なのだ。