7 石見圭佑先生の兵器説明会(リメイク) 3

これが最後の武器なのだけれど、マジで大きい。
「これは、出してもいいのかな?床にもう一つ穴が空きそう」
「ダメですぉぉぉぉ!!!!」
あ、わかった?何だすのかわかっちゃった?
「わかったよ、庭で出すよ」
「ったくキミカちゃんは常識がないですにぃ!」
常識ってアンタ、日本じゃ銃刀法があるからこんなもの持ってる時点でアウチじゃんかよ、そっちの常識は置いといて常識言われても。
俺とケイスケは庭へと出てケイスケの指示する『一番硬そうなところで』その武器を武器リストから出した。目の前の超小型の黒い点、ブラックホールらしき場所からニューッとその武器が展開され、俺の身体と同じぐらいの大きさのそれがドスンと漬物石でも放り投げた時のような音を立てて地響きを立てる。
口径は20センチぐらいはあるかもしれない。長さは俺の(女の)身長よりもちょっと小さいぐらいか。10センチぐらい小さいぐらい。
今までの黒を貴重としたデザインとは一転してドロイドの身体の一部のような硬質感のあるアルミ色の物体で、弾丸が放出されるはずの場所には銃口がなく、まるで照明器具のようにガラス張りの奥にピンがいくつもある。
「これは…あたしが当ててみようかな」
「多分当たらないと思うにゃーん」
ンダトゥ?!俺のハイ・センスの域に達しない程度の名前か?
「…この武器の名前は…『ブラックロックシューター』!!」
「なんですかぉ、その中二病末期患者がつけるようなセンスの名前は」
いやお前に言われたくねーよ。
「それは『BFG』ですぉ」
「なにそれ、なんなのその中二病末期患者がつけるようなセンスの名前は…うりうり」と言いながら俺はケイスケのほっぺたをツンツンとやった。
「ちゅ、中二病じゃないですぉぉぉぉ…」
「で、BFGって何の略なの?まさかゴロがよかったからつけたってわけじゃないよね?」
「BFGは…BFGですぉ…」
「えー。本当に〜?大文字英語表記は略語なんだよ〜?知らなかったの〜?知らないのに作れた武器なの〜?うりうり」
と俺はしつこくケイスケのほっぺたをツンツン。
「こ、これは武器の愛称みたいなもので、今までの武器名みたいに、仕組みからついた名前じゃないのですぉ。ちなみにBFGはBig Friendly Giant。大きくて人懐こい巨人。絵本の中に登場してくる巨人の名前ですぉ」
「ふーん…。それで、一体どんな武器なの?」
「強烈な音波攻撃というか、ボクチンは武器の専門家じゃないのでわかんないですけれども、大きな音を圧縮して放出して、その震えで物質に対して化学反応を起こしてプラズマ変換するというか…」
「なにかこう、もっとわかりやすいように…今の全然わかんない」
「電子レンジでチンする時には強烈な震えを物質に与えて震えを起こさせることで熱反応を起こして温めるわけですがぁ〜」
「ふむふむ」
「その電子レンジ内の震えを起こさせるエネルギーを砲弾のようなもので放出して発射して、広範囲に強烈な震えと共に、物質の構造を粉々に壊す…みたいな。人や動物・植物のような水を中心に構成されているものはこういう震えに弱くて、バラバラになってしまいますにゃん」
「広範囲の対人兵器…ってことかぁ」
「ただしバリアはこれに対応していますので、小型のプラズマディフレクターを装備している兵隊さんにはバリアをそぎ落とす程度の効果しかありませんにぃ…もしバリアがない状態だと例え分厚い装甲の中に居たとしても、攻撃が貫通してダメージを受けるっていう特徴があるにゃん」
「なんて恐ろしいんだ…」
「注意点として広い場所で使うとエネルギーが外に向かって放出されてしまって効果が半分以下になりますにぃ。障害物が沢山ある屋内で使ったらもっとも効果が大きくでますにゃん。電子レンジの中みたいな場所」
「へぇ〜…え?ちょっとまって、これ、自分自身にも当たるってこと?」
「もちろん当たりますにぃ。本来はドロイドみたいなのが装備してるモノ。人体に有害なビーム砲を人が手に持った武器から発射するなんてありえないですぉ。ドロイドバスターには標準的にプラズマディフレクター・シールドが装備としてあるから、このようなハデな武器を使うことができるんですぉ」
「ちょっ、怖いよこれ!」
「武器に怖いもクソもないですぉ!」
「バリアが切れてる時に使ったら自分がいちばん発射地点に近いから思いっきりダメージ食らうじゃんか!!」
「それはキミカちゃんが身体で覚えたらいいことですぉ。『今がこれを使う時だぁ!』って決死の覚悟で使って死ぬんですにゃん」
「死んだらシャレになってない!」
「まぁキミカちゃんの性格だったらどうせラスボスまで貯めて貯めて貯めまくって最期の最期に使おうと思ったらボスが死んでしまって結局一発も使わずにエンドムービーを見るような結果になるんですにぃ…フヒヒ」
「く…見てきたように…」
まぁ、確かにそうだけどね!!
「んじゃ、さっそく…」
俺はBFGを武器リスト内に納めてから、プラズマライフルを取り出して言う。
「はぇぁ?早速何をするんですかぉ?」
「試し撃ちしてくる」
「おいいいいいいいいいい!!!!」
ケイスケが怒鳴りながら俺の肩をその巨大な手でガシッと掴んでガタガタと震わせるもんだからタオルで隠してたおっぱいがブルンブルンと空中散歩するハメになった。一体何なんだよ、興奮してもうぅ…。
「ん…だよォ」
「ダメですにゃん!ダメに決まってますにゃん!!!キミカちゃんは銃刀法っていうのを知ってるのですかぉ?!そんなもん持って歩いてたら職質されて刑務所に送られるに決まってますォォォ!!!!」
「知ってるよそんなの、バレなきゃいいんだよバレなきゃ…」
「え、ちょっ、ヒーローから出る台詞ですかォァ?!大体そんなもので試し撃ちって何を試し撃つつもりなんですかぉ?」
「ほら、公園とかで鴨とかカラスとか道端歩いてる猫を撃っ」
「だ、ダメダメダメダメ!!!ダァァァーーーーーーーンメっ!!ダメだにゃん!ヒーローなのになんて陰湿な事考えてるんだにゃん!?エアガンのお試し射撃じゃないんだから、撃ったら絶対に死んじゃうにゃん…キミカちゃんがこんなに悪い子に育ったのは僕の愛が足りなかったのかにぃ…。二人でベッドで愛しあう必要があるのかにぃ…」
「わかったよ、わかーった。撃たないよ。撃たないってば。ちょっ、そこで服脱がない。服脱がないで。粗末なイチモツ見せないで」
などと俺とケイスケが話をしている最中だった。
向かい側のケイスケの事を嫌ってる家のほうから視線を感じたのだ。そりゃそうだ、深夜に中学生ぐらいのおっぱいの大きな美少女が2メートルはあるかという巨大な肉の塊(デブ)と言い争いをしてておっぱいをブルンブルンさせるは、デブはデブで服を脱ぎ始めるわ、どう考えても不純異性交遊以外の何者でもない。
しかしそれにしてもそんなに人様の家の庭先をジロジロと見るんじゃねぇよ、てめぇ…例え違法じゃなくて胸糞悪くなるわ。
「てめぇ、殺すぞォ…?」
と俺はライフルを隣の家の主人の脳天に狙いを定めながら小さな声で言う。
「(ちょ!!キミカちゃん何をしてるんですかぉ!!)」
小声で怒鳴るケイスケ。
「いや隣の家の奴がさぁ…」
と俺が釈明すると、
「(警察とか呼ばれたら大変な事になりますぉ!)」
などと再び小声で叫ぶ。
そのまま俺は半ば強制的に家の中へと引っ張りこまれ、そして庭へと続く大バリのガラス窓は閉められた。