7 石見圭佑先生の兵器説明会(リメイク) 1

ようやくアンダルシア学園入学の初日が終わろうとしていた。
色々とあったなぁ…。俺の脳裏には走馬灯のように今での楽しかった出来事や悲しかった出来事が流れていった。ラノベにするのならこの1日だけで1巻終わりそうな勢いで、色々とあったなぁ…。
そしてアンダルシア学園の生徒になった俺と同時に、アンダルシア学園の先生にもなったケイスケは、今日は俺と帰るタイミングが偶然にも同じらしく、彼の運転するあのミニカーに乗って帰った。
教師と生徒が一緒の車で帰ったりするのが下校途中の色々な人にバレてしまってなんだか嫌な気分だった。これは俺とケイスケが付き合っているという風に受け止める奴がまさかいるとは思わないけど、少なくともただの教師と生徒という関係ではないって事がバレてしまった事になるのだ。
「ねぇ」
「なんですかぉ?」
「明日も一緒に学校に行くの?」
「ん?そうですぉ?」
なんか『空気はありますか?』『ありますよ』的な、常識を問いただすな的な雰囲気で質問に返された。ケイスケは周囲の人間からどう思われてるのかあまり気にしないタイプみたいだ。
「生徒と先生が一緒に登下校するっていうのは…色々と噂されたりしてヤバイんじゃないのかな?下校時間だって今日みたいに同じにならない事があるし」
「でも登下校途中、一人で居たらレイプされたりするから危険ですぉ」
「いや、されないし!!」
「キミカちゃんみたいな美少女なら本来なら中学生になる前に親にレイプされるか、それを免れたとしても親戚の誰かにレイプされるか、それを免れたとしても近所の誰かにレイプされるか、それを免れたとしてもクラスの誰か美少年に股開くかどれかだにぃ!!」
お前はどこの日本に住んでるんだよ、異次元空間か?
いや、エロゲ内の日本か。
「あたしは中身が男だし、それに…今日、部活の見学した時に色々やってみたんだけど、なんか普通の人間よりも明らかに強い、っていうか、変身後のあのグラビティコントロールっていうのが使えたりするよね?」
「ふひひひッ!気づいてしまったようですにぃ…(ゲス顔」
「気付いたよ。気付いた。この力があったらレイプとかされないし」
「でも、悪い友達に『ちょっとお金稼ぎしようよ』とか言われてスケベなおじさんと一緒にラブホテルとかいっt」
「いくわけないでしょ!中身が男なんだから男を相手にするとかマジで無理です、はい。お金貰っても無理!!」
「じゃ、じゃあ…いいですぉ。一人で登下校しても…」
とても心配してくれてるのはありがたいのだけれど、多分、ケイスケはかなり間違った知識を頭にこびりつかしているような気がするなぁ。
いくらエロゲ脳だったとしても登下校でレイプされるとか、普通のエロゲにはありえない展開だし、現実なら警察なにやってんだよ?って話じゃん。
ちょっと過保護だよ。
家に帰ってからシャワーを浴びている最中にふと気付いた。さっきの話で俺はケイスケに聞かなきゃいけないことが山ほどあるって事に気付いた。
変身前でも使える力、変身後にしか使えない力についてだ。さっそく俺はリビングに行ってからケイスケにその事を聞いてみた。
「うぉぉぉ!」
とケイスケが俺を見るなり驚いている。
「な、なに…」
「お、おきまりですか!!風呂あがりの美少女がおっぱいプルンプルンさせるとか、おきまりですかにぃ!!話をしたいのならおっぱい隠して欲しいにゃん…セックスしたいのならそのままでもいいですにぃ…ティヒヒ」
俺は別にそのままでもかまわないんだけど、ケイスケの視線が俺の胸のほうから動かなくてそのまま血走った目で話されるのもキモイし、とりあえずタオルで乳首だけは隠すようにした。
「た、タオルだけっていうのも…ティヒヒ…」
「聞きたい事があったんだよ」
「な、なんですかぉ?」
ケイスケはチラチラと俺の胸のほうをみながら、胸に向かって言った。
「部活見学の時に変身後の力っぽいのが使えたんだけど、変身前でも使える力があるの?っていうか、変身後と変身前の違いって何なの?」
ケイスケが「ん〜」とか言った後、俺に説明してくれた。
「グラビティコントロールは変身後の10パーセントぐらいの出力で使えると思いますにぃ。ヒーローモノの定義は普通の人間がヒーローモードになって強くなる!!っていうのが前提ですけれども、ドロイドバスターの場合は本来の力を人間モードでセーブするっていう定義ですにぃ」
「ふむふむ…って、セーブ??なんでセーブしないとダメなの?」
「まぁなんというか…ずーっと変身したままにいるのも無理、ということにしてますにゃん。色々と不安要素があるので」
「え?!ちょっ、爆発したりとかしないでしょうね?」
「爆発で済むのなら…おっと、口が滑ってしまったにゃん!」
にゃん!じゃねぇよォォ!!怖いだろうが!!
「とにかく!必要な時だけ変身するにぃ…そのままの状態で1ヶ月も2ヶ月もいると、色々とマズイ事になりますにゃん!わかったァ?」
「わかったわかった…」
とりあえず何もわからない俺にはケイスケの言うことを素直に聞いておくぐらいしかできないし、俺は元々そういう警戒心の強い人間なんだよ、一人で勝手に色々と試したり出来ない系の。
「で、変身する時に自分の周囲の空間を歪める事が出来るのと同じで、実は武器とかストックしてある奴は取り出すことが出来るにゃん!」
「変身前でもできるってこと?」
「ですにぃ」
「ふ〜ん…んじゃやってみようかな」
と、俺は目の前で指で四角を作ってみた。
「間違っても変身しちゃダメだにぃ…キミカちゃんの場合は変身したら周囲の空間を歪めるからボクチンの家が吹き飛んでしまうなりィ…」
「『変身』ってキーワードを口で言わないとダメなんじゃないっけ?」
「なんだか中二病臭くて辞めたにゃん…」
いや、もっと早くに気付けよ。
最初に設計した時に気付けよ!!
「…えっと、じゃあ、武器をイメージしながら四角を作ればいいのかな」
「今は電脳制御になってるからそれでいいですにぃ」
俺は頭の中で武器を出すようなイメージをすると、再び以前みたいに俺が見たことのない武器とその名前みたいなのが出てくる。
以前も使ったことのある刀を取り出した。
と、次の瞬間。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ケイスケの悲鳴。
ケイスケが買ってきてたマウドナルドのテリタマバーガー(未開封)が刀の中に吸い込まれてしまった。
「あ、ごめん」
そっか、これ何でも吸い込むんだったっけ…。
「…」
しかめっ面になるケイスケ。
そんなに悲しむなって、いつでも食えるじゃん、テリタマなんてさ。いまキャンペーンやってるんでしょ。あぁ、テリタマにかける付属のバーベキューソースだけは残っていたみたいだ。そしてケイスケはそれをペロペロと舐めてる…。
「これがグラビティブレードだっけ…?」
「(ぺろぺろ)…そうですぉ。(ぺろ)ブレードの表面にある黒いのはおそらくはマイクロブラックホールを加工したもの(ぺろぺろぺろ)」
「お、おそらくゥ?!これケイスケが作ったんじゃないの?」
「まさかぁ…」
「ふーん。ブラックホールなのか〜。なんかイメージとちょっと違うな。もうちょっと大きなものかと思ってたけど
「通常は『吸い込み』が基本ですけれども、実は使い方によっては吐き出しというか、弾き飛ばしみたいな事もできますにぃ。ただ普通の人が使っても『吸い込み』モードでしか動かないような感じですぉ」
正体不明な武器だなぁおい。
グラビティブレードの表面は漆黒。漆黒という色は光を反射する時に黒く見えるから漆黒というのだけれど、これはその光すら吸収してしまうような、そういう意味での漆黒だった。
そういえば変身した後のあのスーツにしても同じ様に漆黒だったな。
「変身後のスーツって黒いのももしかしてマイクロブラックホールの力?」
「それは僕の趣味…ディュフフ…」
「あ、そ」
「でもちゃんとバリアーは効いてるから安心するにゃん」
「バリアー?宇宙船とかが外壁に張り巡らせているあのバリア?」
「うんうん。『プラズマシールド』ですぉ。プラズマの力で衝撃波やらビーム干渉を中和させたりするにゃん!!」
そういえば最初の戦闘の時、俺は戦車砲(または対戦車ライフル?)を喰らった時に俺の正面にまるでガラスに弾丸が当たってヒビが入るみたいに見えた。これがプラズマシールドなのか。
日本のドロイドやら戦闘機やらには標準で装備されてて、バッテリー車っていうバリア用のバッテリーを提供する車両が戦車の横にくっついてまわるなど、大戦時もそんな運用をされているのはテレビで見たことがある。
「でも何発か銃弾喰らったらすぐに消えちゃったよ」
「まぁ…(ぺろぺろ)それはしょうがないにぃ…(ぺろぺろ)人が装備するものは(ぺろぺろ)ストックサイズが小さいんですぉ」
「しばらくしたらまた復活するの?」
「ですにぃ」
「電源どっから供給してるの?」
「それは秘密ですにゃん!」
まぁいっか。
再び頭に浮かんでくる武器を一つ一つ全部出してみようと思った。とりあえずは今ここで全部説明してもらっておかないと、次にテロリストと戦う時に使い方がわからずに大変な事になってしまうよ。