6 気になる転校生(リメイク) 8

プールの次に俺達が向かったのはテニスコートだった。
「ねぇ、ユウカぁ」
「何よ?」
「もしかしてキミカっちをテニス部に引きこもうとしてるの?」
「そ、そうねぇ。実力があるんだったらいいんじゃないの?」
いや、まず『ヤル気』があるかだろうが。
なんで既に俺がいつでもテニス部に入ろうって前提なんだよ、っていうか何で上から目線なんだよ!!俺はそもそも運動は嫌いだし、テニス部とか興味ないし、興味あるのはあのスコートって奴だな。あれはエロい。
そして、やっぱり俺が想像していた『テニスコート』をあっけなく追い抜いた感があるテニスコート(アンダルシア学園バージョン)がそこにあったのだ。
俺が前にいた学校ではテニスコートと言ってもあるときはバレーコートになったり、バスケットコートになったり、酷い時はバスケットコートになったり、一つの場所を色々な用途として使っていた。しかも掃除が行き届いておらずそこらかしこにコンビニで購入したお菓子などの袋などが散乱しており、たまに中身まで入ってて微生物の寝床になっていることすらあった。
だがこの学校は複数の用途で使うものがなに一つない。
まるでゲームが発売されたときに「普段使う用」「保管用」「友達用」「布教用」…と複数購入するような感じだ。え?違う?
コートのうち1つは男子が、4つは女子が練習してる。元々女子校だからか共学になった今でも男子の絶対数が少ないからこの結果は仕方がないか。
「早見さんじゃないか」
とまた男の声だ。
さすがビッチだな、色々なところに『知り合い』の男がいる。
そこには小麦色に焼けた肌をした健康的なハンサムボーイがいる。まさにテニスの王子様って感じの野郎だ。イケスカねぇ…。
「あ、高崎先輩」
また先輩かよ。
先輩多すぎだろう、この学校。
「ん?その子は?」
さっそく俺に食いついてきやがった。
「あ、今日転校してきた藤崎さん」
「へぇ〜!ほぉ〜!」とか言いながら小麦色のイケメン野郎は俺を見てる。そして、「こんな可愛い子がうちの学校にいたなんて」って言って、ユウカに「だから今日転校してきたって言ったでしょ」と言われてる。
「体験入部しにきたん?いいよ!俺が教えてあげるよ!」
などと馴れ馴れしく話しかけてくるじゃないか。
おいおいおい、俺の学校では男子が女子と話をしていいのはお互いに知り合ってから半年ぐらい経過後にたまたま同じ委員とかになって委員の仕事で話す必要があっった時ぐらいからだぞ。それまで馴れ馴れしく話してはダメっていう暗黙の了解があったのに、なんだこの馴れ馴れしさは、今、俺(美少女)と会ってから3秒ぐらいしか経過してないぞ。
ったくリア充め。ケイスケが一番神経使うタイプの奴だな。
「まずは形から、だなぁ。そうだ!!早見のスコートかしてあげなよ」
ってそっちの形かよ。
「ん。まぁいいけど」
なんか今日は色んな女子に着ているものを借りる日だなぁ。
俺はユウカに引っ張られてテニス部の部室へと入っていった。
ナノカはそこら中のものを触ったりバッグの中身を見るなど卑猥な事を色々とやっていたがユウカは注意する素振りなぞ見せずに、どうやら俺に渡すスコートを吟味しているようだった。
「ん〜。これがいいかなぁ…小さいし」
というわけで、俺はユウカに渡されたテニスルックに着替え終わった。よく考えるとこれってユウカのじゃないな。サイズが小さい。
「ユウカのにしてはサイズが…小さい」
「おい」
俺はユウカの腰にスコート(と呼ばれてるテニスウェア)を当ててから首を傾げながらそう言っていたが、軽く肩をドツかれた。
「それは妹のよ」
「妹?いたっけ?」
「アンタと初対面なのになんで私に妹が居るかどうかで首傾げてるのよ?」
げ!!
そうだったよ、ヤベェヤベェ…幼馴染みだからついつい聞いてしまった。そうだよ、ユウカに妹が居るか居ないかなんて初対面の俺(美少女)には関係ない事じゃないか…フィィィ〜!アブねぇ。
「たはは、そうだね〜」
などと言いながら、俺はゴソゴソとその洗濯した後のような真新しいテニスウェアを着た。俺の身体はユウカ妹と同じぐらいのサイズなのか…身長は測ったことまだないけど、こりゃ…中学生ぐらいの身体のサイズだぞォ…。
「ぎゃあああああ!かああいいいい!」
いつもの調子で今日3度目の胸板抱き締めをやってくるナノカ。
俺もそろそろ慣れてきて抱き締め返した。あー、やっぱりさっき素っ裸で抱きしめあったのがよかったなぁ…。
「も〜。着替える都度レズるのやめてよ!!」
怒鳴るユウカ。…そういえばいつの間にか学園見学ツアーが体験入部に変わっているのは気にしないでもない。
着替え終わった俺はコートに出てくると、すぐさまさっきの小麦色肌の糞リア充先輩野郎が駆け寄ってきた。そして来るなり開口一番「おぉ〜!似合う!可愛い!いいね!入部しない?男子のほうに!マネージャが居なくってさ」とか。
こいつは他にも色々と女に可愛いって連呼してそうだな。
「もう、先輩。ちゃんと教えてあげてよ」とユウカ。
「手とり足とり…教えてあげるよ!」
などと言う。
それから1分後…。
そう、1分しか経過してない。
が、俺もドン引きするほどにこのクソリア充野郎は手とり足とりぴったりと俺に密着してフォームの練習をさせていやがる。男にピッタリと背中張り付かれるのはキモいんですけどォ…そっちの気ないんでやめてもらえませんかァ?
「ん、こう、なんていうかね、ずーん、っていう感じで」と手を持ってラケットを斜め上に上げる。それから「そんで、腰はもうちょっと引いてね、こう」と俺の腰を両手で掴んでバック体位で股間をお尻の穴にくっつけるような事をする。「胸はもうちょっと谷間を作るような感じでさ」と、腕を回してくる。
「あの、先輩…」
「ん?何かな?」
「お尻にちんちんくっつけるのやめて下さい」
「や、ちょっ、くっつけてないよー!!マジだよー。そんな破廉恥な事俺がするわけないよー」なとど言ってる。
斬り殺してやろうか。
しかしまぁ、ビッチにお似合いな感じのビッチな先輩じゃねーか。どおりで二人は仲がいいはずだよ。でもこの先輩、色んな女子と仲はよくなるけど、広く浅くの人間関係って感じだなぁ。こんなのが彼氏になったら大変だろうに。
あぁ、俺としたことがユウカの心配をしてしまっている。
こいつ等がどこで何をしようと俺には関係ないんだった!
「ちょっと!高崎先輩。何そんなにくっついてんの!セクハラでしょ!」と顔を真赤にしてユウカが怒っている。
なんだそんなに必死になりやがって!!
さっき水泳部の時に逆セクハラした時には見てただけの癖に!!!
「まぁまぁそんなに怒るなよ、ジェラシーを感じるぜ?それより、キミカちゃんだっけ!凄いな!完璧なプロポーションじゃないか!キミカちゃんの彼氏は羨ましいな!あー羨ましい…。俺もこんな女の子とセックスしてぇ〜」
こいつ殺していいかな。
「んじゃ、基本は覚えたでしょ」とユウカ。
ん?
基本は覚えた?
この高崎ビッチ先輩の口説きテクニックの基本?
こりゃダメだよ、ナンパビデオに出てくるダメな男の口説きテクニックじゃねーか。ビッチな女が会社ときちんと契約した上で始めてエッチをするレベルの男じゃないか。最悪だよサイアク。
「試合するの!試合!どれだけ出来るのか見てあげる」と、あの葬式の時に見せたような『ライバル』を見る目付きになってるユウカ。
クソ。マジでクソ。
自分の得意分野で勝負するって事か。ほんと、勝つか負けるかっていう体育会系思考しかできねーんだからな、クソビッチめ!!