153 今度こそ 6

俺とマコトが散々ガウロン内部で暴れたからか内部の敵はかなりの数は消し去る事に成功した。しかし、その一方で俺のスナイパー部隊は殆どがお亡くなりになった。何事にも犠牲はつきものだけれど、傍から見ると『キミカ殺られまくりやんけwwwクッソワロタwwww』状態になってて悲しい。
「モウ十分引キツケタデショウ?!」
あのコーネリアが焦っている。
いや、勝利を目前にしているのではないのかと希望が見え隠れしているのだ。今までたった一度ですら勝ったことの無い、ガウロンマップで、しかもTAKESHIと殺り合う時に勝てる可能性があれば誰でも興奮や焦りを覚える。
諦めてない。
俺も、コーネリアも、メイリンも。
「十分だ。私がここで戦った時よりも引きつけた」
「Yes!!」
「で?これからどうするの?」
俺が聞くと、
「後は地下から脱出するだけだ」
そう。
地下から脱出するだけ…。そんな会話を俺達がしている間にも銃弾が飛び交っており、今までのは全部、そのクソうるさい中での会話だったのだ。
「大きな奴はガウロン内部まで入りきれないっぽいね」
蜘蛛タイプの多脚戦車は搬入口のシャッターと少し間を開けて外に配置されている。時折脚が動き位置を調整している。ガトリング砲を発射する位置を。
搬入口手前、つまりガウロン内部のほうは倉庫になってて様々な障害物のお陰で俺達は戦車砲にもガトリング砲にもファランクスにもミサイルにも『狙われる事無く』今の今まで生き残っている事が出来た。だがもし、搬入口から地下道へと出たら蜂の巣どころの騒ぎじゃなくなるだろう。
「逆ニ、私達モ外ニ出レマセン」
メイリンはどうやって脱出したの?」
「おい…私は一度足りとも脱出した覚え、ないぞ」
って…そうだった…。
「じゃあどうやってあの戦車突破するんだよォ?!」
「史実通リナラ、ココデ殲滅シマス…私達ガ」
「殲滅させられてどうすんねん!!」
「あの戦車、倒すにはRPGか何か必要」
「確か武器庫にあったよね?」
それを唯一知るであろう人物、コーネリアに俺は聞く。さっきから武器庫を行ったり来たりして、ありとあらゆる兵器を試し撃ちしてたからな。
「What?」
「What?じゃないよ!RPGだよ!RPG!!」
「全部撃ッテシマイマシタ」
「じゃああの多脚戦車はどうするんだよーッ!!」
「代ワリニDroidハ始末デキタンダカラヨシトシマショウ…」
「えーッ!!!」
ここ…までか…。
「ソレヨリ面白イモノヲ作ッタンデスガ、最後ニ試シテミマセンカ?」
ヘラヘラ笑いながらコーネリアが俺の前に見せたのはカーリングのような形で下に反重力コイルが作動している円状の物体だ。
「何これ?」
「おい、お前、まさか弾薬を使ったこれ、作ってたのか?!」
「HeHeHeHe…」
おいおいおいおい!!
どおりで対戦車用の武器がなくなってると思ったら…「あと少しで勝てると思ってたのになんてことしてくれんだよォォォ!!」と、俺はコーネリアの首をシメて身体をガクガクブルブルと揺らしながら叫んだ。
「He…He…Hey…窒息死シテシマイマス…」
「それで…一体なんだ?まさかカーリングの玉じゃないだろうな?」
「磁気地雷デス。反重力コイルデ宙ニ浮カビマス…コレヲカーリングノ玉ノヨウニ転ガシテ戦車ノ股グラニ突ッ込ミマショウ!!」と、コーネリアはバイヴをアソコにツッコむような仕草をしながらヘラヘラ笑っている。
「窮鼠猫を噛むか…」
…そう。追い詰められた鼠が猫に噛みつくように、弱者も逃げられない窮地に追い込まれれば強者に必死の反撃をして苦しめる。むしろどこか諦めがついている今の状況だからこそ、とんでもない手段で相手を苦しめようとするのかもしれない。俺達は十分に戦ったよ。
だから最後の最後まで、諦めないで『楽しもう』じゃないか。
すると、俺の前でコーネリアはアサルトライフルを放り投げたではないか。色々面倒くさくなって彼女が一番嫌っている武器を放り投げたのだ。そして、案の定、一番好きな武器である『サブマシンガン』を取り出した。
「私ハ、ヤッパリコッチノホウガ好キデス」
それはつまり、最後ってことだ。
コーネリアは最後の戦いに挑もうとしている。だから死ぬ時は自分が好きな武器を使って死にたいと思ったのだ。
それを察したのかメイリンが言う。
「お前たちが居たら、あの時、私、死ぬことはなかった」
精一杯の褒め言葉なんだろうけれど、でも矛盾してるよ。
「あの時死んだから、今こうして一緒に戦ってるんでしょ」
「そうだな…」
「フタリトモ、車ニ乗ッテクダサイ。私ガ戦車ヲ爆破サセタラ…イエ、ヨシマショウ。爆発サセヨウトサセマイト、出口ニ向カッテ走ッテクダサイ」
「わかった」
「オッケー」
しかし俺はその場に残った。
「Hey…」
そんな俺の方をコーネリアは拳で小突いた。
「本体のほうは車に向かったよ。あたしはスナイパーキミカのほうだよ」
「死ヌツモリデスカ?」
「最後まで楽しむのなら『特等席』で観ようと思ってね」
「HaHaHa!!Yeah…イイデショウ、見セテアゲマショウ。America人ノBanzai-Attackヲ!!」
俺は武器をショットガンに変える。
もう狙って撃つのは飽きた。
本能の赴くままに撃つ。
それもまた『戦場』だ。
コーネリアはブラジャーをメイド服の中から取り出すと、それにフラッシュ・バンを巻きつけた。そしてヒュンヒュンヒュンと空中でブン回しながら、もう片方の手で3、2、1と合図をする。
1を過ぎたところで俺は目を瞑ったまま、ショットガンを持って駈け出した。
コーネリアが投げたブラ及びそれに紐付けられたフラッシュ・バンが俺の頭の上を通りすぎて、倉庫の中を通りすぎて入り口に纏まっている日・米の兵隊どもの上で炸裂する。
轟音。
光。
倉庫に並べられた棚の隙間からショットガンを放つ。
TAKESHIが操作する兵の顔を吹き飛ばす。
コーネリアが宙を舞う。
いつもの調子でサブマシンガンをぶっ放す。撒き散る埃、木片、鉄片、血飛沫。今までにないトリッキーな動きで翻弄するので連中はどこに向かって銃を撃てばいいのかわからず、コーネリアを狙っているつもりが仲間を撃ったりもする。
そんな混戦状態で俺もコーネリアを支援するようにショットガンを放つ。胴に命中させて空中に持ち上がる敵兵の身体。
どうやらTAKESHIはなぜコーネリアと俺が無茶をしているのか、そして今、窮地に立たされているのは自分であることを理解したようだ。
「止めろォォォォォ!!!」
あの凄まじい怒声のようなTAKESHIの声が響く。
カーリングは反重力コイルを作動させて地面5センチ上を摩擦0の状態でスーッと滑っていく。棚の下を滑り、兵士の股の間を滑り、ドロイドの股の間を滑る。
跳びかかって磁気地雷(カーリングの玉)を止めようとする日本兵を、俺のショットガンが吹き飛ばした。
跳びかかって磁気地雷(カーリングの玉)を止めようとする米兵を、コーネリアのサブマシンガンが蜂の巣にした。
「Yeeeeaaaaaaahhhhhhh!!!」
見事なシュートだ!!
気持よすぎるぐらいに綺麗にカーリングの玉こと磁気地雷は多脚戦車の足元に滑りこんで行き、
(ゴンッ!)
と言う鈍い音出して勢い良く戦車の腹に張り付いた。
大爆発。
倉庫の棚も、荷物も、壁も、兵士も、ドロイドも爆風で吹き飛ばされた。と、同時に俺もコーネリアもドロイドのチェーンガンによって身体を撃ちぬかれて地面へと転がった。
少し遅かったな!!
馬鹿め!!
俺の本体はメイリンが運転するトラックで倉庫の中を飛び出してガラクタ化した多脚戦車を弾き飛ばして地下道を突っ走っていった。
「HeHeHeHe…」
コーネリアは血まみれになって地面に転がっている。
その側には俺も転がっていた。
TAKESHIのコントロールする兵隊どもは俺とコーネリアがまだ生きている事を知ってAIにしては珍しく『怒って』近寄ってくる。
「どーーーしちゃったのよォ…人間風情が、威勢がいいじゃねぇか?」
その手で俺とコーネリアを殺すのか。
「モウ、『タネ』ハ尽キマシタ…」
天井を見つめながら俺に言うコーネリア。
「一応、面白いと思って、最後に、持ってきたんだよね」
「What?」
「あたしのブラの紐、引っ張ってみて」
コーネリアは無言で俺のメイド服の懐から伸びている白いブラの紐を引っ張る。カチリカチリと音を立てながらブラの紐の先に繋がった『手榴弾のピン』が沢山出てくると、コーネリアは「HaHaHaHaHa----ッ!!!」と大笑いする。
俺も「あはははははは!!」と大笑いした。
倉庫は再び炎に包まれた。
TAKESHIが制御する日・米兵を道連れにして。