153 今度こそ 5

スナイパーキミカこと俺とマコトはメイリンとコーネリア、そして俺本体と合流する為にガウロン内を移動していた。
はっきり言って既にかなりの数が内部へ侵入している。
ただ、他のスナイパーキミカと交戦している為、足止めは食らっている状態だろう。この硬直状態はいわゆるそこら中でエンカウントしまくる状態でもあり、スナイパーキミカ達の手を借りても遭遇率は下降することはなかった。
既に俺の手にはお気に入りのスナイパーライフルもハンドガンもナイフも無く、日本兵が落としていったアサルトライフルを持っている。まさか…まさかの弾切れだよ。ライフルが弾切れになるぐらいに大量のエンカウント率、いや、そもそも数では向こうが多いんだから仕方ないのか。
「こうやって敵の落とす弾薬を拾い集めて進んでいくのって、昔のFPSみたいな感じだよね、キミカちゃん」などとマコトは呑気に言ってる。
「昔のFPSって?そこら中に赤十字のマークの箱が落ちてて拾ったら傷がどんどん回復していって殆ど無敵状態の?」
「そうそう」
「あれは(銃を撃ちまくる)本当に(銃を撃ちまくる)ゲームっぽいゲームだよね!!(弾を装填する)」
「あ…くそぉ…」
マコトの視線の先にはドロイドがいる。米兵の死体の奥からゆっくりと廊下を歩いてくる。チェーンガンが唸る音が響く。で、俺とマコトはため息を履いて部屋の中へ隠れる。
(バリバリバリバリバリ)
廊下が粉砕される。
こうなってはもう手も足も出ない。
ドロイド相手にはグレネードぐらいじゃないと通用しないんだわこれが。
スナイパーライフルの付属品であるルーペみたいな鏡を利用して廊下の状況を見る俺。あぁ、クソッ。TAKESHIの奴、ドロイドを後方にどすんと構えて、俺達が少しでも廊下に出てきたら撃ちまくる、出て来なかったら米兵を進める、って作戦でゆっくりと制圧しようとしてきてるぞクソが。
「相変わらずやり方が小汚いなぁ…」
と俺は吐き捨てるように言う。
「この部屋の中で応戦する?」
「そうするしかないな…マコトはタンスの裏から撃って。あたしはベッドの下から撃つから」
「うん」
それぞれが配置につく。
…。
足音。
複数の足音。
人数は5人ぐらいか?
そろそろ来るぞ…。
突然、室内に何かが投げ込まれた。
あ…。
「フラッシュバン!」
俺は叫ぶ。と、同時に目を瞑って耳を塞いだ。
マコトも同じ事をしていると祈りながら。
周囲に凄まじい音が響く。耳を塞いでいても聞こえてくるほどの強烈な音。もし目を開けていれば視界は真っ白になって暫く視力は戻らないだろう。
突入時に投げ込まれる事が多い、手榴弾の一種だ。殺傷能力はないものの、あれをまともに食らったら次の攻撃は一方的に食らうことになる。
ほら、案の定、フラッシュバンの爆発を合図として米兵が突入してくる。が、俺とマコトはもう慣れてるんだよクソが!!
最初に入ってきた奴と次に入ってきた奴を蜂の巣にするマコトと俺。
「次!!」
「OK!!!」
再び配置に戻る俺とマコト。
今度はさすがに警戒してるのか、米兵はドアからマシンガンを持つ手だけを部屋の中にチラつかせながらデタラメに撃ちまくる。アホが!!上官にそんな銃の持ち方を教わったのかァァァ〜ン?!
俺はその腕を撃ち、吹き飛ばした。
マコトが壁越しに狙いを定める。
そして壁貫通。
廊下に立ってた米兵どもが倒れる。
「クリア?」
「うん」
「ふぅ…」
あ、やばい。弾切れじゃん。
俺は死体のうちの一つに手を伸ばして、思いっきりベッドの側まで引っ張ろうとする…が、さすがはアメリカ人の死体だ。日本人の美少女の俺の体重ではびくともしないぞ。しょうがない、ここは直接死体を漁る…か、
「え?」
俺は目を疑った。
TAKESHIの野郎…。
「き、キミカちゃん…避けてェェェェ!!!」
マコトが叫んだ。
叫んだのだ。
そう。
奴め、俺が武器を漁っているのを前から知ってたんだ。
だから米兵の戦闘服を『脱がすと』手榴弾が爆発するように、紐を付けていやがった…クソッ!!!想定外だ!!コンピュータのくせに、こんな、
(ドォォォォッ)
それは軽い爆発だった。
でも部屋の中を吹き飛ばすのには十分だった。
そしてマコトの命を奪うのにも十分だったのだ。
「ま、マコトォォォ!!!」
マコトは俺の代わりに爆風をモロに受けた。そしてもうヒットポイントが0に近い状態になっている。「もう残りHPはゼロよ!」状態だ。
「どうして…あたしはスナイパーキミカの1人なんだから守らなくたって他にも沢山いるのに!!どうして庇ったりするんだよォ!!」
俺は叫んだ。
マコトは俺の腕の中で、薄れゆく意識の中、かすれた声を出す。
「笑ってくれていいよ…男ってのはバカな生き物なのさ。好きな子が危ない目に会うと身を呈して守ってしまう…。ボクは…キミカちゃんが例えコピーであっても、ボクの目の前で…死ぬなんて、許せなかったんだ…」
「マコト…」
(がくっ)
マコトは絶命した。
そんな中、廊下を近づいてくる米兵の足音。
「マコトの死は…無駄にはしない!!!」
俺はマコトの死体を片手で持ち上げた。
精一杯の力を振り絞って持ちあげた。
そしてその死体を盾にして廊下に出る。
『え、ちょっ、キミカちゃん!!』
『何?』
『人の死体で何してるんだよォォォ!!!』
銃弾の雨がマコトの身体に当って、俺の身体はノーダメージ。
ノダメカンタービレ状態。
「おらおらおらおらおら!!!」
さすがに盾を装備してくるとは思ってもいなかっただろうがクソが!
この盾はなぁ!!
俺の友達が!!!
俺を守って死んだ後に!!!
残った!!!
『肉の盾』だぁ!!!
「喰らえこの野郎!!」
俺はドロイドへ向かってマコトの死体を投げつけた。と、同時に、マコトの死体に巻きつけていた手榴弾のピンへつけられた紐を引っ張る。
(ドゥゥン!!)
木っ端微塵だ。
マコトの死体もドロイドも木っ端微塵になった。
「マコト…君の死は忘れない…」
『思いっきり死者を冒涜してるよォォォォ!!!』