153 今度こそ 1

「居たってどういう?」
俺はまるでここの事を知っているかのような素振りを見せるメイリンに尋ねる。でも、俺の声は半分ほどは上の空で聞いているかのように何かを探している。
「私、ここにいた。ここで戦った」
汚らしいガウロン内部の部屋を巡り巡りながらメイリンは何かを探している。
「Heey…ココハ思イ出ニ浸ル場所ジャアリマセンヨォ?」
「実在する戦場をマップにしてるからメイリンがいた事があっても変じゃないけど…でも、ここって何度も強襲部隊が突入してるから住民はみんな死んだんじゃなかったっけ?」
マコトがそう言った。
それを合図に俺もコーネリアも黙ってしまった。
自分で言っておいてマコトも黙った。
そう、死んだんだ。
メイリンは、死んだんだ。
「私、ここで…死んだ」
…。
沈黙。
そんな俺達を無視してメイリンは何かを探している。
しかし、それを見つけた…ように見えた。
メイリンはある部屋のドアを開けて入った時、動きを停めた。
一点を見つめて動きを停めた。
俺とコーネリアはゆっくりと同じ部屋へと入った。
そこには一人の男がベッドの側で倒れていた。腹には2、3発ぐらいの銃弾を食らって血を流して、その色から察するに撃たれてから時間はそう経ってない、その男は今の今まで生きていたかのように見える。
でもこれはゲームのマップの一部なのだ。
モブですらない。
「これ、もしかして…」
マコトがメイリンの顔色を窺いながら聞いている。
メイリンは顔を曇らせたまま、その死体を見つめていた。
これがメイリンだ。
ここで死んだのだ。
しかし、すかさずそのメイリンだったと思われる男の死体の額に銃痕が刻まれた。振り返るとそこにはコーネリアがあのニヤニヤした顔で立っている。
「おい!何をする!!!」
メイリンはコーネリアの襟首を掴むとその身体を宙に押し上げた。
「He…He…He…」
「死体を傷つける、無礼な事だ!」
「放シテクダサーイ」
それから英語でコーネリアは怒鳴った。
何を言ってるのかわからないが、きっと放してくださいを英語で言ったんだと思う。そのまま、メイリンの肩をドンッと突いて銃を向けた。
メイリーン…メイリンハココデ死ンダノデスカァ?」
「そうだ!」
「No!」
「これを見ろ!私の死体だ!このマップには私の死体、含まれてる!歴史が証明してる!私、ここで死んだ。ここで日本軍と米軍に殺された」
「ジャア、アナタハ誰デスカァ?」
「…」
メイリンハ、生キテマス。私ノ知ッテルメイリンハ、コンナトコロデ死ヌヨウナ雑魚ジャナイデス!!」
「フンッ!糞虫が!こんな茶番、うんざりだ!」
「逃ゲルノデスカァ?!」
「私が死んだところで、ゲームするとか、信じられない」
俺もマコトも二人の言い合いは止めれなかった。
確かに不謹慎だ。
実際にここで死んだ人がいて、その場所で俺達は遊ぼうとしてる。まともな神経じゃない…が、それはわからなかったよ。俺がここで死んだわけじゃないんだからさ。俺もコーネリアもマコトも戦地に行ってたわけじゃないんだから。
「これ、ログオフ、どうやる?」
とか言い出すメイリンの肩をガシッと掴むコーネリア。
そして、
「Hey」
と言う。
「何だ!」
「モウ一度、ヤリ直シタイト思ワナイノデスカ?」
「…」
メイリンはハンドガンを持ったまま、固まっていた。
ハンドガンを見つめていた。
「リベンジシマショウ」
「…」
「今回ハ、一人ジャナイデス」
「…」
「コンナトコロデ、一人デ死ンダッテイウ思イ出ハ、後デ笑イ飛バシテヤレバイインジャナイデスカ?」
メイリンは机の上に転がっていた銃弾を拾ってハンドガンの中に入れた。
それを見て俺もコーネリアもマコトもほっとしたよ。
「メイファンは…どこだ?」
「メイファン?そろそろ沸くと思うけど…」
あの要人護衛のモブか。
メイリンは弾薬を装填し終えて、言った。
「私の妹だ」