152 NEED de NEET 4

そう言う訳で…ナツコのアイスクリームを勝手に食った罰としてケイスケは俺達の練習の為にCall of Dirtyの仮想空間用サーバを設定・公開することになった。でも俺が勝手に弄ると火事を起こしたり爆発させたり児ポ法違反で警察が突入してくる危険性があると勝手にほざきだすのでサーバの設定はケイスケがやることに。ゲームのサーバ設定なんてよくまぁ今まで触ったこともないのにマニュアルサイト見ながら出来るもんだな。
小一時間経過。
「終わりましたにぃ」
お。
終わったか。
「2階のパソコンからログオンしたらいいの?」
「ですにぃ。なんかキモいオッサンのモブだったから全部美少女に変えておきましたニャン!」などと言ってる。
まぁ確かにCall of Dirtyに登場してくるモブ(キャラクターの外観)は兵士ばっかりだからキモいオッサンばっかりだけど…。
さっそくコーネリアにサーバのアドレスを知らせる。
特訓だ!
俺はコーネリアが普段プレイしているのが近代戦だからナツコは気を利かせて九龍城砦マップでも最近の戦闘を主題としたものをチョイスしてくれた。ドロイドやらサイボーグ、アンドロイドなど盛りだくさんの戦闘である。
九龍城砦(ガウロン・センジャーイ)は政府所有の建物だけれども、普段は使われずいざとなった時に立て篭もる場所の一つになる。で、普段は住民が寝床に使っているので実際の戦闘でも住民が犠牲になっている。
このマップは『要人護衛』だ。
政府の要人を守りながらガウロンを包囲している日本軍・米軍をかいくぐって逃げ出せば中国軍の勝利、要人が殺されれば例えプレーヤーが生き残っていたとしても負けとなる。
制空権は完全に日本軍・米軍に取られており、中国軍側の航空支援は存在しない。陸上からの砲撃支援は史実に基づけば中国海軍の位置が特定されるまでの間は可能だ。つまり、このプレイマップの中では2回だけ可能になっている。
中国軍側の装備は対戦車ドロイドが1体、対人用の小型ドロイドが2体、25名の兵員で装備は親衛隊クラスの重装備になっている。対して日本軍は多脚戦車が5台、アサルトシップ1機、ジャマー・レーダーサイト1機、ジガバチ(ヘリ型ドロイド)2機、対人ドロイドが5体、サイボーグ化兵が5人、一般兵が30人。米軍はアサルトシップが1機、ヘリが3機、一般兵が20人、対人ドロイドが5体だ。
制限時間は30分。
30分後にさらに追加で米軍やら台湾軍やらもやってくる。つまり、30分の間に中国側は逃げ出さなければもう負け確定なのである。
『北側から米軍、南側から日本軍が攻めてくると思われますわ』
『これってどっから攻めるって選べるの?』
『えぇ』
『じゃあ、史実通りには攻めてこない可能性もあるんだね』
既に俺はゲームの仮想空間内でマコト、コーネリアと共にガウロン内にいた。ナツコが家のパソコンからサーバの仮想空間内に通信してきていた。
『確かにそうですけれども、史実では北と南から攻めるのが一番効率がよく、被害も控えれてたから…って言われてますし、TAKESHIも同じ手段を選んでくると思いますわ。まぁ、確率論ですけれども』
『とりあえず史実どおりとして、西か東、どっちに逃げるか決めようか』
ゲーム内の登場人物は先も話したとおり、本来ならオッサンばかりなのだがケイスケのパッチのお陰で俺達は全員メイド服を着用していた。
「ナンデメイド服ナンデスカァ?」
「ケイスケに言ってよ!」
「コンナ格好デ死ニタクナイデース」
俺はそんな事を言うコーネリアのおっぱいを指でツンと突き、
「ここには死にに来たんじゃないでしょ?」
と問うた。
「マァ、装備ガシッカリシテレバ文句ハアリマセン」
とコーネリアは愛用のサブマシンガンを、っておいいいいいいいいいいいい!!いつもと同じ事をしようとしてんじゃねーよ!!
「ダメだよ!!突撃してポイント稼ごうと思ってんでしょ?!」
「ソレガ私ノJustice」
「だぁぁぁかぁぁぁらぁぁぁ…要人護衛だから慎重にしないとダメって言ってんじゃんかよぉぉぉぉ!!!このゲームはリスポーン不可なんだから突撃して点数稼ぎとかそもそもダメなの!!」
俺はコーネリアの首を締めながらそう言った。
「シ、仕方ナイデスネ…不本意ナガラ、アサルトライフルヲ使ウコトニシマス…」渋々コーネリアは装備をアサルトライフルに切り替えた。
「この子はなんなの?」
マコトが言う。
そう、さっきから俺達の側にはビジネスライクなスーツに身を固めた女性…年齢は中学生ぐらいの中国人が居るのだ。
『その子は美帆(メイファン)。政府要人ですわ。最終的にその子を守りきって脱出することが出来ればゲームは勝利となりますわね』
なるほどなるほど。
その時だった。
爆音が足の下のほうから響き渡ったのだ。
見れば砂埃が空へと散っている。爆撃だ。
「戦闘開始デスネ!」
意気揚々とコーネリアが言う。
『戦略としてはある程度は建物内部まで日本軍、米軍を引き寄せてから逃げ出したほうがいいですわね。史実でもそれをやろうとしていたみたいですわ。ただ、引き寄せすぎて全滅したようですけれども』
ナツコが解説する。
俺は窓の側に身を寄せ、決して窓から身体がはみ出ないような状態で鏡を持って外を見る。実はこれがスナイパーとしての普段からやってる状況確認方法なのだ。で、外を確認する限りは周囲のビルの間から日本軍の多脚戦車が近寄ってきてるのがわかる。側には兵士が脚に隠れるように進んでいる。
空からはヘリの音がする。そうなると屋上側からは米軍が降りてきてるってことになる。さっきナツコの話では米軍、日本軍は北と南から攻めてくるとあったけれど、どうやら拠点が北と南にあるってだけで、航空機を使って一気に距離を縮めてこれるらしい。どおりで日本軍の多脚戦車が1台しか見当たらないと思ったよ。じわりじわりと送り込んでくるのか。
「限ラレタ兵員ヲ一気ニ送ッテクルト、突破サレタラ終了ダカラデスネ」
「なるほどね」
鏡で位置を確認し、そして素早く窓から身体を出す。
もちろんそれで狙撃されてしまうけれども、その前にターゲットを始末。
(ターンッ!)
撃ったら素早く影に隠れる。
鏡で確認。
「よし、1キル!」
俺は振り向いてマコトとコーネリアに向かってピースサインをした。
と、その時だ。
空の彼方のほうでチカチカチカと3回ぐらい光ったのだ。
そう、何かが光ったのだ。
その光に遅れて「ドンドンドン」と空に響き渡る…砲撃音。
「キミカちゃ」
マコトがそう言った次の瞬間。
目の前が真っ赤になった。
気がつけば俺とコーネリアとマコトは幽霊状態となってゲームを鑑賞モードで参加している状態に切り替わっていた…そう、どこからともなく発射された砲撃により俺達は死体と化してしまったのだ…。
瓦礫の中に転がっているメイド服姿の俺とマコトとコーネリア。
現実通りに悲惨な死を迎えていた…。