152 NEED de NEET 2

興奮冷めやらぬコーネリアには何を話してもダメなので、明日、学校に行ってから話す事にしたのだ。まぁ、興奮冷めやらぬ状態にさせたのは俺がスナイパーで奴を影から狙撃しまくったのが原因なんだけどね。
そして翌日。
「やぁ、コーネリア、昨日はよく眠れたかい?」
という挨拶で俺はコーネリアの席に近づく。
「ファァァァァァーッック!!!」
奴はすかさず俺めがけて本物のマシンガンを放ってくるぞおいおいおい!!何興奮してんだよ、目を真っ赤にして!!!
弾丸をブレードで弾き飛ばしまくる俺。
(カチッ…カチッ…ぷすん)
弾づまりを起こしたらしい。
「どうした、喧嘩、外でやれ」
いやいやいや、もう少し他にも言うことがあるだろうが、メイリンさんよォ…学校で銃を撃つなとか、学校に銃を持ってくるなとか、そもそもここは日本だから銃刀法違反で武器は没収だこの野郎だとか。
「キミカノセイデ寝レマセンデシタァ…」
思いっきり黒目の部分が目底に沈んでいるコーネリア。
「そういえばキミカちゃん、昨日、パソコンの前でニヘニヘ笑ってたからまたゲームの中でコーネリアを殺しまくってたのかな?」
なんて余計な事を言うなよマコトぉ…。
「思イ出シテキタラマタムカツイテ来マシタァァァァ!!」
と再び俺へ銃を向けようとするのをブレードで叩き斬る。バラバラに分解されて教室の廊下に広がるサブマシンガン
またコーネリアは言う。
「卑怯ニモ芋ッテヤガルカラ、ゲームガ全然面白クアリマセン!!日本人ナラ日ノ丸ノ鉢巻ヲ頭ニツケテ、全裸デ『天皇陛下バンザーイ!!』ト叫ビナガラ、バンザイAttackシテクルベキダト思イマーッス!!」
と言いながらバンザイAttackの真似事をしているコーネリア。
「いつの時代の日本人だよ!!」
「トコロデ昨日ハ興奮シテ話ヲ聞イテイマセンデシタ、何カ相談デモ?」
あぁ、そうだったよ。
ったく、コーネリアが興奮するせいで余計な時間を食った。
俺は昨日の話をコーネリアにした。
TAKESHIと自らを名乗る戦車のAI野郎が研究所の電源をハッキングして停電に追い込んで来やがったことだとか、ソイツとのFPS勝負で負けた事などなど。
「ロボットノ癖ニ生意気デスネ。人間様ノ恐ロシサヲ味アワセテヤルベキデス」などと昨日の俺がモニターの前で叫んでいた事と似たような話をしてるコーネリアだ…それはもう負けフラグを立たせまくってるよ…。
「一緒に戦ってみない?」
「面白ソウデーッス!!」
その話を聞いていたメイリンも、
FPSとか金持ちの遊び。私もやりたい」
などと言ってくる。
マコトも負けじと、
「キミカちゃんが行くところ、マコトあり…例えそれが仮想空間だとしても…。血なまぐさいゲームだからちょっと敬遠してたけど、みんながやるならボクもやってみたいかな?」と参加したいようだ。
早速だが、俺はその話をナツコにする。
「ってことで、みんな参加したいそうなんだけど、おっけかな?」
「もちろんですわ!」
メイリンとコーネリアはああいう性格だから作戦通りに動いてくれるかわかんないけど、普通の人間よりかは使えると思うよ」
「あぁ、作戦で思い出しましたわ。いい戦場がありますのよ」
「?」
ナツコはそう言ってバッグからMBAを取り出して机の上に広げる。
「昨日、ネットで良い感じの難易度の戦場データを手に入れましたのよ。これですわ。中国の『九龍城砦(ガウロン・センジャーイ)』」
「あぁ。ガウロンかぁ〜…」
このマップは試したことはない。
九龍城砦(ガウロン・センジャーイ)は古くはスラムの集合体だと言われた街であったが一度は取り壊された。先の大戦では再びガウロン砦として蘇ることになった、中国軍屈指の城砦である。
大戦中は何度も爆撃を受けてボロボロになったけれども、そのボロボロの瓦礫の中、それらが自然の要塞と化し、中国軍が立て篭もって随分と厄介な砦だったらしい。大戦後も何度か中国の司令官など地位のある人間が最後の砦として立て篭もる場所に選ぶのがここだ。
今時の中国のテレビドラマではガウロンの戦いという事で日本軍・米軍の同盟軍部隊がガウロンに攻めてくるのを中国人がカンフーなどを駆使して倒すっていう嘘八〇〇な物語を放送して自尊心を保っている。実際は攻略が難しいってことで精鋭部隊を送り込んだので幾度と住民もろとも指導者連中を殺している。都合の悪い情報は国民には知らせないのは今も昔も同じだ。
で、そういう大戦時の様々な戦いをゲーム化しているのがCall of Dirtyの面白いところでガウロンに留まらず、プレーヤー1人1人に至るまで全員が『実際に歴史に登場する人間』なのだ。
そして、俺はプレイしたことはないけれども概略は…「要人護衛」のミッションであること、難易度はそれなりに高いってことは知ってる。歴史の上では日本軍と米軍の連合軍が圧勝しているし、実際にCall of Dirtyをプレイするのは日本人かアメリカ人が多いのでチーム分けではみんな日本・アメリア軍を選択する。で、くじびきに負けた連中は悲惨にも難易度が高い中国軍へと配属されてしまうのだ。もちろん、それで勝てばポイントは普段よりも多く貰えるけれども…。
「難易度が高いのを選ぶなんてナツコやるねぇ…でも、どうやってあのAI野郎を騙して『中国軍』につけさせるのかな?あいつならサイトも見てるから『勝つ』っていう条件なら日本・アメリカ軍を選ぶよ。ポイントを貯めるのなら中国軍だけどね、今回の目的はうちらに勝つことだし」
「今回はキミカさん達が中国軍ですわ」
「え?」
「今回の作戦のキモはそこですの。ネットで攻略サイトを見ていたのなら絶対にTAKESHIは日本・アメリア連合軍を選びますの」
「まさか…だから戦略が練りやすいって言わないでよね」
「そのまさかですわ」
「え、ちょっ、無理だってば!歴史の中では日本・アメリカ軍の圧勝になってる場所だし、実際に四方八方から狭い通路でエンカウンターばっかり食らうし、ネットゲームの勝利率でも断然低いってわかってるんでしょ?」
「それは誰も勝とうと思わなかったからです。中国軍に配属されたら貧乏くじを引いたと思ってやる気も出なかったし、不利な地形を研究するだけの価値もありませんでしたわ。他のステージでポイント稼いだほうがいいんですもの。でも、今回はキミカさんがこのステージで勝負を掛ける…だから今まで誰も練ったことがないステージの攻略法を一から練ることができる。歴史では幾度も制圧されていますけれども、だからこそ日本軍・アメリア軍の行動パターンが読める。それを『勝機』と呼ばずしてなんと呼ぶんですの?」
確かに…そうだ。
あのTAKESHIの性格から考えて『絶対に勝利する確率が高い方を選択する』そうでなければ…仮にも勝負を楽しもうとするのなら、奴はリスポーンポイントで待ち伏せして俺にヘッドショットをキメたりなんてするわけがないじゃないか…どうして俺はそれに気づけなかったんだ?
相手の土俵で戦っても勝てない…。
だから土俵をこちらで用意するんだ。
もちろん、相手には自分が優位であると思わせる土俵を。