149 簀巻きラバー 9

二人はご飯を食べてからは動物園エリアへと向かっていった。
ここの動物園エリアには市に昔からある動物園の出張所として存在している。檻なんて大層なものを用意できないので木の柵があって中ではうさぎやら山羊やら羊やら犬などが放し飼いになっている。
動物ふれあいコーナーという奴だ。
ふれあいコーナー内のベンチに座ったユウカ妹の側で彼くんは100円で購入した『どんな動物でも食べる栄養価の高い餌』を投げては羊や山羊がそこに集(たか)るのを見て楽しんでいる。
よほど餌を普段から与えられてないのか、それとも単純に食い意地が張っているだけなのだろうか、餌がなくなった状態でもまだ「くれ!くれ!」とせがんでくる動物ども。あの餌が入っている油紙の袋までもムシャムシャと食ってしまう始末。二人はまた100円を自販機に投入しては餌を投げて集まってくる動物を見るという遊びを繰り返している。そこには会話こそないものの、恋人達の楽しそうな雰囲気だけは伝わってくる。
中に入れば姉のほうはバレてしまうと思う。
で、ユウカは外のベンチの影で監視、俺達は木の柵の中へと入った。
ナノカが餌を購入して最初こそ羊や山羊へと投げつけて食わせてたりしたんだが、ナノカの奴、飽きたのか今度は俺に向かって投げつけてきやがる。
おい、やめろ!
「ちょっ!!キミカっち!!ワロタ!!!」
クソォォ!!!
山羊も羊も俺に向かって突進してくるだろうが!!
「そのうちキミカっちを餌だと思って食べ始めるんじゃないの」
と大笑いしながら息切れ切れで言うナノカ。
「あぁん、もう餌なくなった」
なんて遊んでいると、ふと、俺はユウカ妹が何をしてるのか気になっていた。羨ましくも恋人同士で戯れなどをしてるんだと嫉妬心一杯でその光景があると予測し、ユウカ妹とその彼くんが居るであろう場所を見る。
彼くんが餌をあげる人だという学習がされたようで、動物たちは彼くんの周囲に集(たか)るようになる。ふ…馬鹿め。下手に繰り返すと学習するのだよ。ここの連中は…そのうち服でも餌だと思って食い始めて全裸で放り出されるぞ。
と、その時だった。
何匹かのあぶれた羊やら山羊やら犬やらは自分達に餌が回ってこないんだろうと諦めて今度はユウカ妹のほうへと向かったのだ。そして、運悪くも、いや、間抜けなのかユウカ妹はポリポリとスナック菓子を食ってる最中だった。
ミニスカートの上にはもちろんポロポロと菓子をこぼしてるのだ。動物達が集まってくるのは時間の問題だったに違いない。
集まった動物達は一斉にユウカ妹の足をペロペロ、太ももをペロペロ、股の間をペロペロ…ってどっかで見た光景だなおいおいおい!!!
「ふわぁぁぁぁぁああん!!」
セクシーな喘ぎ声をあげるユウカ妹。
「早見さん!」
動物の群れの間を抜けて彼くんはユウカ妹の元へと駆け寄る。そして抱きかかえて…文字通り、お姫様抱っこをして柵の外へと運び出したのだ。
なんていうカッコイイんだ。
「うっひょー!かっこいー!」
なんてナノカが言う。
俺も今の行為はポイント高いぞ、褒めて遣わす、なんて心の中ではそう思ってたんだが、予想に反してユウカ妹の反応は「やべぇ、かっこいい、この人」っていうのではないみたいなのだ。
ぽわーんとして顔を赤くして彼くんを見つめているのだ。
まぁこれを「やべぇ、かっこいい、この人」的な風に判断してしまう人もいるかもしれないが、少なくとも俺にはそんな風には見えなかった。
「うふふふ…キミカっち、どうやらうまくいったみたいだね!」
なんてナノカが言うから俺も一瞬、二人の関係はうまくいったんだと思ってしまった。だが、なんとなく、違う。なんていうか…その目は…。
なんとなく嫌な予感がギンギンと俺の股間のほうからしてくるのだ。
「どうしたの?キミカっち、腕組んで考えこんで?」
と聞くナノカ。
そして、「うまくいったみたいね!ふふふ…ヒーロー現る?」などとまた場違いな事を言ってるユウカ。
違うんだよ。
違う。
あれはヒーローを見るような目じゃない。
強いて言うのなら…ん〜…。
などと俺が考え込んでいると、ユウカ妹と彼くんのカップルは休憩スポットでアイスクリームを買って二人で仲良く食べてる最中らしいのだ。
「なんか良い感じにラブラブになってるから、私達も休憩しましょっか?」
なんて呑気に構えるユウカだ。続けざまに、
「何食べたい?」
と言う。
すかさずナノカが「クレープ!」と言うので俺も「クレープ。あんこの入ってる奴ね」と注文する。買ってくるのはユウカらしい。
「あんた達ねぇ…クレープ屋ってほぼ入り口付近じゃないのよ?遠くまで買いに行かせるわね。ま、私も食べたいと思ってたから行ってくるわ」
そう行って財布を持って歩いて行くユウカ。
その間、俺達が監視役となって二人の行動を監視する。
「あ、ユウカっち、スピーカー置きっぱなしだ」
「ほんとだ。二人の会話を盗聴しましょう…」
ベンチに腰掛けて待つ間、俺とナノカの間にはスピーカーを置いて二人の会話を聞く。会話って言っても殆ど風の音なのだけれど。
小高い丘には整備された芝生が生えてて緑色の山になっている。恋人達の休憩スポットになっているだろう。他にも彼女に膝枕されてる男だとか、夫婦で敷物を敷き寝転がっている人達だとか色々。そんな中、無言でアイスクリームを食べているカップルがユウカとその彼くん。
シュールだ。
『あ、あいすが…』
スピーカーからユウカ妹の声だ。
『あ、ハンカチで拭くよ』
ったく世話の焼ける妹だな。なんて思ってた俺。次の瞬間、目ン玉が飛び出るかと思ったぐらいに驚いた。
『…舐めて』
俺とナノカが顔を見合わせる。
スピーカーの上で。
『え?』
『舐めて拭きとって』
おいおいおい!!!
おいおいおい!!!
何を言い出すんだい君は?
「き、キミカっちィ…」
「なんだい…ナノカっちィ…」
「これって、ヤバイ状況?」
「さ、さぁ?」
『ぺろ…ぺろ…』
「「!!!!」」
俺とナノカはほぼ同時にユウカ妹と彼くんが座っている芝生方面を見てみる。さっきまで二人仲良く揃って座っていたのに、今は、まるで奴隷のように彼くんがオスワリしてユウカ妹の股の間に顔入れてるじゃないかおいおい!!!
『ふあぁぁああぁぁぁぁん…気持ちいいよ…』
『早見さん!早見さん!』
「きききききき、キミカっち!これ止めるべきなのかな!?」
「これは進展と捉えるべきではないでしょうか?!」
「じゃ、じゃぁ、先輩としてあの子達に教えてあげるべきことは?!」
「やっぱり、その、避妊…ではないでしょうか?」
「ヒニーンッ!」
馬の真似をするナノカ。
「ナノカっち…そうじゃなくて、」
「コンドーム?!それ、遊園地だとどこで売ってるのかな?!」
「薬局にしか売ってないと思うよ!!」
「ノォォォゥゥゥ!!!」
鼻息を荒くしながら俺とナノカは、青姦現場を前に性欲全開で見入っている。既に変態の域である。変態を見て変態が変態っぷりに変態度全開になってる。
そうしている間にもユウカ妹の、
『はぁ…はぁ…あぁん…気持ちいいよ。もっと上のほう』
とかいう声がスピーカーから漏れる。
『ぱ、パンティーがびっしょりだよ…』
『ぬがして』
「ぬがしてェ?!」
叫ぶ俺。
「き、キミカちゃんも、そろそろ脱いだほうがいいんじゃないの?」
「うん、脱ぐ。すぐ脱ぐ。ナノカは?!」
「脱いだ。もう脱いでる」
「よし!がったいだ!」
「うん!」
俺はナノカの白い太ももを挟みこむように自らの白いふとももで合体、そして温かい股間に温かい股間をくっちゃくっちゃとくっつける。
「キミカ、ごめん、あんこのクレープ買おうと思ってたんだけど、間違ってカシスのクレープ買っちゃった。色が同じっぽいからいいよねェェェェェエエエエ?!何やっとんじゃァァァァァァァ!!!」
俺とナノカはそこで始めて我に返る。
「いや、その、あの、あれ、あれ!!あれだよあれ!」
「あ゛ぁ゛?!」
慌てて俺が芝生のほうを指さすもんだから鬼の形相でユウカがそっちを見る。
と、その瞬間、ユウカの毛という毛が漫画みたいに思いっきり逆立つのが俺にもわかった。そりゃそうだ、自分の妹のパンツを彼くんが思いっきり脱がそうとしてんだから、そんなのをみて「あぁ、おしっこした後なのね」なんてのを考えるのは変態ぐらいなもんである。
「ぬゥァ゛にやっとんじゃァワレァァァァ!!!」
凄まじい怒声。
ユウカがすかさず駆けつけてユウカ妹の前で彼くんをチョークスリーパーで、あっというまにマットに…いや、芝生に沈めた。